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地域語の経済と社会 第16回

2008年 9月 27日 土曜日 筆者: 田中 宣廣

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第16回「おらほ」

【おらほのクッキー】
【写真1 「おらほのクッキー」】
【「おらほクッキー」の英訳名】
【写真2 「おらほクッキー」の英訳名】
【製造はみやこ書店(有)食品部】
【写真3 製造はなんと「書店」】
【みやこ書店】
【写真4 みやこ書店】
【長野県にも「おらほ」】
【写真5 長野県にも「おらほ」】

 岩手県宮古市に「方言ネーミング」のお菓子があります。「おらほのクッキー」というものです。宮古市のシンボル「鮭」を材料に入れています。全国放送のテレビ(NTV系『ズームイン朝』)で取り上げられたこともあります。大箱(写真1),中箱,小箱の3種類あります。

 「おらほ」の意味ですが,クッキーの箱に英訳名が付いているので,ここからわかると思います。「My Town’s Cookies」と書いてあります(写真2)。「おらほ」とは「私の町(地域,村)」という意味です。「ほ」は「方」が元です。

 さらに,この「方言ネーミング」は,作って売っているお店のユニークさと大いに関連しています。箱の裏面に「みやこ書店(有)食品部」とあります(写真3)。なんと,本屋さんがクッキーを作り,売っているのです(写真4)。書店内で作り,箱に詰めて,販売しています。「おらほのクッキー」という「方言ネーミング」は,本屋さんだからこそのアイディアです。岩手県内の多くの,“本職”の菓子メーカーにはほとんどないことです。

 ところで,「おらほ」とは岩手県独特どころか東北独特の言い方でもありません。インターネットで「おらほ」または「オラホ」を検索しますと,11万件以上の多数ヒットし,東日本の広い範囲で使われていることがわかります。

 これについて,当研究会の大橋敦夫先生が,長野県の東御市(とうみし)の「おらほ」を教えてくださいました。「OH!LA!HOビール」と「レストランOH!LA!HO」(写真5)です。

なお,宮古市の「おらほのクッキー」は,みやこ書店のほか,宮古市内の各店で扱っています。宮古に来るのが難しい人には,通信販売が利用できます。http://www.sanriku.co.jp/cooky1.htmに案内があります。みなさんも,どうぞ,試してください。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』田中宣廣(たなか・のぶひろ)
 岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,諸方言の形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。

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2008年 9月 27日