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三省堂辞書の歩み 小辞林

2014年 11月 19日 水曜日 筆者: 境田 稔信

三省堂辞書の歩み 第34回

小辞林

昭和3年(1928)9月12日刊行
金沢庄三郎編/本文975頁/三五判変形(縦152mm)

小辞林(大型版)

昭和4年(1929)10月1日刊行
金沢庄三郎編/本文1330頁/三六判変形(縦168mm)


左:【小辞林 初版】3版(昭和3年)
右:【本文1ページめ】(クリックで拡大)


左:【小辞林 大型版】1版(昭和4年)
右:【本文1ページめ】(クリックで拡大)

 『小辞林』は『広辞林』を基にコンパクトなコンサイス版として編集した国語辞典である。『小辞林』の初版から1年後に刊行された「大型版」は、4段組から3段組になり、単純に大きくしただけではなく、約2000語の外来語が増補されている。

 例えば「アイデアルカラー」は、『広辞林』初版(大正14年)にも新訂版(昭和9年)にも載っていない。「アウト」では、子項目に「アウトカーブ」「アウトサイド」「アウトドロップ」「アウトフィールド」といった野球用語が加わっている。これらは『広辞林』の新訂版に載録された。

 見出しの仮名遣いは、『広辞林』と同様に漢字音の仮名遣いを表音式の「写音的仮字遣」にして、歴史的仮名遣いを下にカタカナで小さく載せている。逆に、和語の仮名遣いは歴史的仮名遣いだが、「写音的仮字遣」を下にカタカナで小さく載せているのも『広辞林』と同じ。

 また、外来語の長音符号「ー」は読まない方式で配列した点も、促音の「っ」や拗音の「ゃゅょ」は見出しだけでなく語釈にも用いられている点も『広辞林』を踏襲したものだ。

 本書は戦後も発行を続け、昭和31年(1956)9月には第176版が出たことが確認できている。改訂版の『新小辞林』の刊行は翌32年2月だった。

 昭和29年の第172版は「新版」となっているが、その存在はあまり知られていない。なぜなら、発売期間が短いうえ、本文の最初にある内題にだけ「新版」とあって、表紙や奥付には表示されずに版数が続いているからだ。昭和26年の第170版は初版のままだったので、第171版か第172版からの変更である。じつは、この「新版」は「大型版」を4段組に直して採用したものだった。「新版」の本文は998頁である。

●最終項目(画像はクリックで拡大)

*初版      *大型版

   

●「猫」の項目(画像はクリックで拡大)

*初版      *大型版

   

●「犬」の項目(画像はクリックで拡大)

*初版      *大型版

   

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◆この連載のほかの回をお読みになる方は⇒「三省堂辞書の歩み」目次へ

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【筆者プロフィール】

境田稔信(さかいだ・としのぶ)

1959年千葉県生まれ。辞書研究家、フリー校正者、日本エディタースクール講師。
共著・共編に『明治期国語辞書大系』(大空社、1997~)、『タイポグラフィの基礎』(誠文堂新光社、2010)がある。

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【編集部から】

2011年11月、三省堂創業130周年を記念し三省堂書店神保町本店にて開催した「三省堂 近代辞書の歴史展」では、たくさんの方からご来場いただきましたこと、企画に関わった側としてお礼申し上げます。期間限定、東京のみの開催でしたので、いらっしゃることができなかった方も多かったのではと思います。また、ご紹介できなかったものもございます。
そこで、このたび、三省堂の辞書の歩みをウェブ上でご覧いただく連載を始めることとしました。
ご執筆は、この方しかいません。
境田稔信さんから、毎月1冊(または1セット)ずつご紹介いただきます。
現在、実物を確認することが難しい資料のため、本文から、最終項目と「猫」「犬」の項目(これらの項目がないものの場合は、適宜別の項目)を引用していただくとともに、ウェブ上で本文を見ることができるものには、できるだけリンクを示すこととしました。辞書の世界をぜひお楽しみください。
毎月第2水曜日の公開を予定しております。

2014年 11月 19日