続 10分でわかるカタカナ語

第11回 マネージメント

2017年5月20日

どういう意味?

「管理」や「経営」を意味します。「マネジメント」とも言います。

もう少し詳しく教えて

マネージメント(management)の基本的な意味は「物事をうまく扱うこと」です。

端的に言えば、ひとつには「管理」です。例えば「部下をマネージメントする」と言った場合は「部下の仕事について、監督し指示・指導などを行うこと」、すなわち「部下の仕事を管理すること」を意味します。

もうひとつには、「経営」ということです。「事業をうまく扱うこと」イコール「経営」と考えれば、この意味もよく理解できることでしょう。例えば「企業のマネージメント」という表現は「企業経営」と置き換えることが可能です。

どんな時に登場する言葉?

管理が関わるあらゆる分野で登場します。管理の対象は人・時間・お金・資源など多岐にわたります。特に経営分野では、この言葉がよく登場します。

どんな経緯でこの語を使うように?

古くから使われている言葉です。例えば『最近野球術』(橋戸信著/博文館/1905年)という書籍では、野球チームの運営を意味する「マネーヂメント」が「総理法」という注釈とともに登場していました。この場合の「総理」とは「すべての事務をとりまとめて管理すること」(大辞林より)。つまり組織管理を意味するマネージメントが、明治時代にはすでに登場していたわけです。

近年、マネージメントという言葉が注目された話題もありました。2010年、書籍『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら』(岩崎夏海著/ダイヤモンド社/2009年)、通称『もしドラ』がベストセラーとなったのです。その影響で、経営学の父とも称されるピーター・ドラッカーの名著『マネジメント―課題・責任・実践(Management: Tasks, Responsibilities, Practices)』(1973年、日本語版は1974年)が、雑誌・新聞・テレビなどのメディアであらためて注目されたのです。

マネージメントの使い方を実例で教えて!

「マネージメントする」

動詞として使えます。例えば「組織をマネージメントする」と言った場合は「組織を管理・運営する」ことを意味します。

経営者を意味する「マネージメント」

経営分野におけるマネージメントには「経営者」「経営陣」「経営体制」などの意味もあります。例えばトップマネージメントとは「最上位の経営者層」のこと。ミドルマネージメントとは「中間管理職」を意味します。

「マネージメント手法」のいろいろ

経営手法を表す言葉のなかには、マネージメントを含む複合語が数多く存在します。例えば人材管理を行うための「人材マネージメント」、事業遂行を管理するための「プロジェクトマネージメント」、危機管理のための「リスクマネージメント」、知識を共有するための「ナレッジマネージメント」など、実に様々な経営手法が存在するのです。

「マネージメントシステム」

そんな経営手法のうちシステム(体系的な仕組み)として確立したものを、特に「マネージメントシステム」と呼びます。このような仕組みの中には、個別の企業が開発・運用する仕組み(例:トヨタ自動車の「トヨタ生産方式」など)がある一方で、標準化組織が制定・要求する仕組みもあります。

後者のうち有名なのが、ISO(国際標準化機構)が制定する「マネジメントシステム規格」でしょう。例えば「環境マネジメントシステム」(企業が環境保全を行うための仕組み)を規格化した ISO-14000シリーズや、「品質マネジメントシステム」(企業が品質管理を行うための仕組み)を規格化した ISO-9000シリーズが知られています。

そのほかの「マネージメント」

経営以外の分野にも、マネージメントを含む複合語は数多く存在します。例えば資産管理を意味する「アセットマネージメント」、不動産管理を意味する「プロパティマネージメント」、怒りの感情を制御するための「アンガーマネージメント」、心理的ストレスを制御するための「ストレスマネージメント」、時間管理を意味する「タイムマネージメント」などがあります。

言い換えたい場合は?

一般には「管理」または「経営」を使います。例えば「部下をマネージメントする」を言い換える場合は「部下を管理する」と表現できますし、「企業のマネージメント」を言い換える場合は「企業経営」と表現できます。なお「トップマネージメント」のように「経営陣」を当てるのが適切な場合もありますので、注意してください。

雑学・うんちく・トリビアを教えて!

馬を馴(な)らす そもそも英語の management は、動詞である manage(マネージ)の名詞形です。その manage の語源は、イタリア語で「馬を調教する」こと、言い換えると「馬を馴らす」ことを意味する maneggiare(マネジャーレ)という言葉でした。この「馬を馴らす」意味が転じて、マネージメントは「物事をうまく扱うこと」を意味するようになったのです。

マネージャー マネージメントの仲間の言葉にマネージャー(manager)があります。日本語では「レストランの支配人」や「芸能人のサポートを行う人」さらには「スポーツチームのサポートを行う人」などの意味で使われてきた言葉ですが、英語の manager から、「経営者」という意味でも使われるようになっています。
 前述した『もしドラ』は、野球部のマネージャーを任された女子高生が主人公となる物語でした。物語の冒頭、この女子高生はマネージャーの仕事を始めるにあたって、マネージャーの意味を辞書で調べます。その過程で彼女は「マネージメント」という言葉を発見しました。そして彼女はマネージメントの関連書籍を書店に探しに行き、経営学者ドラッカーの著作に出会うことになるのです。

筆者プロフィール

もり・ひろし & 三省堂編修所

新語ウォッチャー(フリーライター)。鳥取県出身。プログラマーを経て、新語・流行語の専門ライターとして活動。『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の「流行観測」コーナーや、辞書の新語項目、各種雑誌・新聞・ウェブサイトなどの原稿執筆で活躍中。

編集部から

「インフラ」「アイデンティティー」「コンセプト」等々、わかっているようで、今ひとつ意味のわからないカタカナ語を詳しく解説し、カタカナ語に悩む多くの方々に人気を博したコンテンツ「10分でわかるカタカナ語」が、ふたたび帰ってきました。

「インテリジェンス」「ダイバーシティー」「エビデンス」など、日常生活の中で、新たなカタカナ語は引き続き、次々に生まれています。世の中の新しい物事は、カタカナ語となって現れてくると言っても過言ではありません。

これら悩ましいカタカナ語をわかりやすく考え、解説してゆきます。

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