全国各地の放送局には、地元の方言を活かしたユニークで個性的な番組があります。
NHK宮崎放送局には、平日夕方の地域情報番組「いっちゃがTV(テレビ)」があり、番組名が方言で名付けられています。
平成12年4月から放送されており、まもなく丸10年。県内各地の多様で多彩な情報が得られると好評を博しています。(総合テレビ、月~金、午後5:05~6:00放送 )
「いっちゃが」とは〔いいんだよ〕という意味あいの語で、「いい」+「と」+「じゃ」+「が」の変化したものです。共通語の「良い+の+だ+よ」に相当します。
メインキャスターは宮崎市出身の百野 文(ひゃくの・あや)さんで、彼女が番組内で使うことばは基本的には共通語ですが、相手や状況に応じて、宮崎の方言も交えて話せるのが強みです。明るいキャラクターとも相まって、番組発足以来、キャスターを続けて、番組を支えています。
「宮崎県民を愛し、宮崎県民に愛される番組をめざす」というのがこの番組のねらいで、毎回その話題にゆかりの人たちが生放送のスタジオに……。毎年、800人から1000人近い人がこの番組に登場するということです。
番組で取り上げている代表的なトピックとしては、宮崎の旬の食材、話題の人物インタビュー、大学・商店街めぐり、中学校紹介、町おこしの話題、手芸・園芸講座、ライブ演奏、カルチャー情報、医療情報、県内各地のイベント紹介……などがあり、バラエティーに富んでいます。
「方言」関係では、月に3回、水曜日には「宮崎弁研究所」というコーナーがあり、西都市出身の寺原重次さん(宮崎県語り部の会会長)が宮崎方言の魅力や意味・用法などについて解説をしています。
またその研究員で、劇団「いもがら」の役者、中所美紀(なかじょ・みき)さん(日南市出身)が宮崎方言を駆使して「げなラップ」を作り、振り付けも考えて、保育園・幼稚園の子供たちから、友人どうし、家族そろって、職場のメンバーなど、番組でいっしょに踊るグループを募集し、画面で紹介しています。
「げな」はひとから聞いたこと=伝聞を表す〔~だそうだ〕という意味です。
また、第1~3木曜日放送の「てげてげ休日」というコーナーは、暮らしを豊かにする趣味や実用に関するノウハウを紹介しています。
「てげてげ」は第78回で取り上げた「てげてげ運転」と同様です。「あくせくせずに、のんびりほどほどに、楽しく休日を過ごしましょうよ」という提案と呼びかけの意味あいが込められています。
以上のように、番組名や各コーナーに方言でネーミングをし、また話題としても方言を取り上げることによって、地元の視聴者によりいっそう身近に感じ、親しみを持ってもらおうという意図が伝わってきます。
《参考》NHK宮崎放送局のホームページに「いっちゃがTV」の概要が写真入りで紹介されています。中所さんが踊っている「げなラップ」の動画も見ることができます。
写真提供:NHK宮崎放送局