宮崎県の道路を、夜、車で走っていたら、道路の上に「交通安全」を呼びかけるメッセージが電光掲示板に表示され、目に飛び込んできました。
そのひとつ、県北・日向市の国道10号線で見かけたものが、【写真1】です。
「てげてげ運転 追放運動 実施中」とありますが、「てげてげ」は宮崎県の方言です。共通語に訳すなら、〔いいかげん、適当、ほどほど、まあまあ、そこそこ、…〕といった意味あいのことばです。
ですから、「てげてげ運転」とは、言うならば、「慎重運転」「きびきび運転」の反対語に当たります。
同じ掲示板には、その他に「みんなで なくそう 交通事故」「ストップ! 脇見 ぼんやり運転」という警告もあり、これらが一定の時間ごとに次々に点灯してメッセージを送り、運転者に注意を呼びかける仕組みになっています。
「てげ」は「大概」の変化したもので、宮崎の方言では「てげ ぬきー」〔非常に暑い〕、「てげ しんきなー」〔非常にイライラする(じれったい、くやしい)〕といったように、〔非常に〕という強調の意味で使われる代表的なことばです。(同様な語として「大概には」の転じた「てげにゃ」「てげな」もありますが、同じ意味です)
ところが、それが2回繰り返されて「てげてげ」となると意味が変わり、先のような意味あいに転じます。
この「てげてげ」は、宮崎県人の県民性を表現するときにもしばしば引き合いに出されます。宮崎県は、夏、毎年のように台風に襲われることを除けば、気候も温暖で、農産物や水産物も多く、暮らしやすい土地柄だけに、あくせく汲汲とすることなく、のんびりほどほどに暮らせばいいではないか、という気風が強いと言われます。その気分にぴったりなのが、この「てげてげ」だというわけです。
「だろう運転」ということばがあります。「このまま進んでも大丈夫だろう」「たぶん相手のほうが避けてくれるだろう」「黄色信号でも何とか通過できるだろう」といったように、自分に都合のいいように考え、楽観的に行動してしまう、そういう運転態度のことですが、宮崎県の「てげてげ運転」はまさにそれと軌を一にします。
が、それでは交通違反や交通事故はなくならない! そう考えた宮崎県警察本部が、てげ頑張って呼びかけているのが、「てげてげ運転 追放!」というわけです。
《参考》Wikipedia「だろう運転」=自動車の運転において、事故に繋がるような楽観的予測に基づいた運転を戒める日本語の慣用句。(中略)日本の自動車教習所や警察などでは「だろう運転」という言葉で総称し、運転者に対してより注意深く予測や行動を行うことを啓蒙している。
(引用:2009.12.7 //ja.wikipedia.org/wiki/%E3%81%A0%E3%82%8D%E3%81%86%E9%81%8B%E8%BB%A2)