今回は10月に行われた「第39回京都写真家協会主催『京ことば』で綴る写真展」の会場を訪問したときの話をします(またまた予定を変更して申し訳ないのですが)。パンフレットに会長のあいさつが掲載されています。その中で、会長は、その土地の言葉を例えば、東京弁、九州弁、大阪弁、名古屋弁と呼びますが、当地、京都のことばは、「京都弁」とは呼ばず、「京ことば」と呼ぶ理由について述べています。それは、ともすれば、関西弁に飲みこまれようとする危機から「京ことば」を守る義務を感じるからにほかならないと。写真展では、その思いがじゅうぶん伝わる作品が紹介されていました。
方言は、字づらだけでは伝わらなかったり、ほかのことばでは、ぴったりした表現に言い換えができないことが多くてもどかしい思いをすることがあります。その表現を写真で見ると「ああ、そうだ。な~るほどネェ。」と簡単に理解できます。ここで紹介する写真は、出品した写真家の許可を得て、しろうとの筆者が会場で撮影し、編集したので、元の写真は、もっと美しくすばらしい写真です。
(画像はクリックで拡大します)
「きしゃ、ごっついな~」(汽車、大きいね【写真1】)と題された、機関車を見ている子どもの写真です。肩車をしてもらっているちいさな子どもの背中と「ごっつい」機関車が対照的です。驚いている子どもの顔が見えるようです。
「よろしゅう おたの申します」(よろしくお願いします【写真2】)は、京都の街角でよく見受ける光景です。挨拶をする場面での人と人との距離の保ち方、視線、腰の折り方までちゃんと見る人に伝わります。人に頼みごとをするときは、「こうでなくっちゃ!」という手本が示されています。
てぬぐいをかぶった年配の婦人が路地ですぐき漬けを売っています。若い女性に「さぶがりやな~」(寒がりだね)と言っています【写真3】。ジャケットを着た若い女性は、寒そうに肩を丸くして手を前に組んでいます。すぐき漬けというのは、千枚漬けと同じく、京都を代表する漬け物で、冬が旬で初物が売られる頃は、とても寒いのです。
最後は、「はんなり」【写真4】です。写真で表現された「はんなり」です。「はんなり」は、「明るく、華やかなさま」を言います。暗闇で舞うほたるが非常にきれいに写しだされています。水面にうつる月の光も華やかさをそえています。第29回「“ほっこり”なべに“はんなり”豆腐でまったりする」でも紹介しましたので、参考にしてください。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。