外国の方言みやげは、これまでいくつか紹介されました(第12回「外国の方言みやげ」、第19回「韓国の方言事情」、第67回「リトアニアの方言区画」、第74回「ドイツの方言(ベルリン編)」)。今回は英語の例をお見せします。1989年にイギリスで方言みやげを見つけました。いずれもイギリス(イングランド)北東部の、訛りがきつい地域のものです。
【写真1】はヨークで手に入れたテーブルクロスです。「ヨークシャ方言」は有名です。単語や短文で訛った発音を示そうとしています。
【写真2】はジョーディーGeordie方言のエプロンpinnyです。同じデザインのテーブルクロスもあります。ジョーディーというのは、タインTyne川流域ニューキャッスルの方言のことです。こちらも綴りを変えて発音の違いを示し、面白おかしいことを書いています。
方言みやげは、人々の意識を反映します。英語の訛りの強さは、イギリス(イングランド)の北のほうに際立ちます。これについての英語の論文の一つは、インターネットでダウンロードして読めますし、印刷もできます。English Papers by Fumio Inoueで検索すると出てきます。V章19b論文 “Subjective dialect division in Great Britain” の167ページの地図で場所が分かります。また170ページのグラフで学生の意識が分かります。
実はEnglish Papers by Fumio Inoueは三省堂のサーバーで見ることができます。学術論文を探すには、Google Scholarが便利で、またCINIIやGENIIも役立ちます。でも上の論文は今のところ検索されません。
日本で英語の本を出版しても、高くついて、一部の人しか(だれも?)買いません。インターネットで公開したので、無料配布と同じ効果があります。でもサービスしてくれた三省堂の人は「出版社としては複雑な気持ちだ」と言っていました。せめて三省堂のほかの本が売れるといいのですが。