戦前の方言絵はがきは、福岡県でも多く出ました。年代の見当がつくものを挙げましょう【図1】。これと同じ写真を使った「天然色」の絵はがきがインターネットに載っていて、昭和12年頃の写真だそうです。
戦争直前の方言絵はがきですから、古めかしい言い方が出てきます。一行目に「見てんなざい」と書いてありますが、誤植ではありません。他の絵はがきでも「なざる」がいっぱい使われています。
「まけときなざい、たまがんなざす、知つとんなざつせう、きなざつた、知んなざらん、云ひなざる、泊んなざれにや、たまがんなざろう、出しなざんな」などです。絵はがきの方言の部分をコンピュータに入れましたから、一度に検索できました。「なさる」の「さ」が濁音の「ざ」になったものですが、「ござる」の影響でしょうか。
また「ぢやろう」が使われていますが、今は「やろう」に変わりました。1995年に出た方言ラップ「SO.TA.I」では「そんな時やけん」と歌っています。こういうのが「新方言」です。
戦前の方言会話が分かるのは、貴重です。地元の人ならこの方言絵はがきからもっと色々なことを読み取れるはずです。
西 大 橋
博多と福岡の、あいを流れる那珂川の西大橋バ見てんなざい近頃架け替へになつて、こげな立派なモダンの橋イなつとります、ほうら電車が通つとります、バスが通うとりますばつてんチヨツとも音がしますめいが、こげなよか橋ア御座いませんせんバイ、向ふに見へよるとが、福岡縣産業奨勵館、那珂川の水の流れの美しかこと、ほんにイ西大橋ア日本一ぢやろうやア
方言絵はがきは、第222回、227回にも扱われています。これまで登場した方言絵はがきも、第222回からクリックでたどれます。