第146回と第156回で東日本大震災の被災地における方言エールを報告してきました。
第156回においては,その類型を考察し,構成は「エール+地名」が基本であることがわかりました。
エールの意味には,発信源と被災者の立場の関係も的確に反映されています。地元の人が発信源なら勧誘(がんばっぺし,他),外部からの救援の自衛隊のものでは意志(まげねど)の他,命令(けっぱれ)がありました。
(写真はすべて筆者撮影)
今回は,方言エールの考察の3回目として,その応用例について考えます。
外部から被災地を訪れる方は,震災直後からは救援隊でした。それが,先日,自衛隊が完全撤退するなど,救援の段階は,ひとまず収まりました。今は,全国各地からの警察の応援やボランティアといった支援隊,そして,芸能人やその他の激励の皆さんです。その激励の皆さんも,方言エールをくださいました。
芸能人は,訪れた先で色紙にサインを残しますが,それに方言エールを添えた例が多数あります。発信源は外部からの激励者ですが,訪問した被災地(今回の例は,岩手県宮古市)の方言「がんばっぺ(す)」による方言エールです。【写真1】
また,激励者側の地域の方言を使った珍しい例もあります。沖縄の「那覇太鼓」の大きな日の丸です。沖縄の方言で「チバリヨー東北」です。岩手県内各地では8月にエイサーなどを披露しました。【写真2】~寄せ書きは,被災者たちの感謝の言葉です。同団体のWebページ内には,元の図案の画像があります。
それと,被災地発信のものも,二つの方向に発展(進化)しています。
一つは,構成の応用です。岩手県立宮古高校の文化祭のポスターの方言エール「ガンバッペ宮高」は,「エール+校名」になっています。最初は基本の「エール+地名(宮古)」だったのを,後に修正したものです。あまりに多い「ガンバッペ宮古」のままとせず,独創性が出ています。【写真3】
もう一つはデザイン化です。第156回の写真2の岩手県宮古市の方言ステッカーでその萌芽が見られ,第161回の写真1の岩手県陸前高田市の「がんぱっぺし」では,現在の同市の象徴としての希望の一本松を中心に実に整った図案となっています。
宮古市でも,陸前高田市の例にもあった方言エールのローマ字表記を混ぜる方式が採用された図案が用いられています。【写真4】