[意味]
旅館で、宿泊料金と食事料金を別建てにすること。料金体系が明確になると同時に、客は「宿泊のみ」「一泊朝食付」「一泊二食付」など、さまざまな選択ができる。(大辞林第四版〈データ版〉から)
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日本旅館といえば朝夕食付きの「1泊2食」が一般的ですが、宿泊と飲食の提供を分ける「泊食分離」を導入し、客室稼働率を上げようとする動きが広がっています。全国的に人手不足が叫ばれるなか、特に地方の旅館では調理や配膳を担う従業員の確保が難しくなってきており、苦境打開へ向けて素泊まりに特化した宿も増えているといいます。
バブル経済の崩壊後、全国的にホテルの数が増える一方で、旅館の数は漸減してきました。職場などの団体旅行客が減り、個人旅行のニーズが高まってきています。円安で増加するインバウンド(訪日外国人)を取り込むにも、グローバルスタンダードである「泊食分離」への取り組みは避けて通れません。宿泊施設では夕食を提供せず、近隣の飲食店で食事をとってもらい、地域全体で旅行者をもてなそうとする温泉地も出てきました。
記事データベース、日経テレコンで「泊食分離」が出現した記事を検索したところ、日本経済新聞では2024年10月までに83件あり、うち8割の67件が地域経済面(地方版)の記事となっていました。初出は1994年11月25日付朝刊九州経済面に掲載された「九州への観光客、93年度から減少続く」でした。1ドル=100円割れするような円高相場の長期化で、割安になった海外旅行への対抗策のひとつとして「泊食分離」が検討されたというもの。初期のころは低価格志向への試みとして取り上げる記事が多かったものですが、昨今は人手不足の影響を受けた対応へと変化が見られます。旅館に限らず、高齢化や後継者難に悩む民宿やペンション経営の記事も見られました。
人手不足を逆手にとった「泊食分離」が旅館や地域の魅力を広げ、リピーターを増やしていくカギとなるのでしょうか。
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新四字熟語の「新」には、「故事が由来ではない」「新聞記事に見られる」「新しい意味を持った」という意味を込めています。