人名用漢字の新字旧字の「曽」や「祷」の回を読んだ方々から、常用漢字でも人名用漢字でもない漢字を子供に名づけたいのだが、どうしたらいいのか、という相談を受けました。筆者個人としては、それはあまりオススメできず、やはり常用漢字と人名用漢字の範囲で出生届を書いてほしいのです。ですが、親には親の事情というものがあるのでしょう。そこで、それがどれだけ大変なことかを知っていただくためにも、あえて逆説的に、「人名用漢字以外の漢字を子供の名づけに使う方法」を、全10回連載で書き記すことにいたします。
出生届を不受理にしてもらう
子供の名が決まったら、まずは、市役所(あるいは区役所・町役場・村役場)に出生届を提出しましょう。子供の名に常用漢字でも人名用漢字でもない漢字が含まれていれば、その出生届は受理されないはずです。でも、出生届が受理されなかったからといって、窓口の人をどやしつけたり、胸ぐらをつかんだりしてはいけません。常用漢字でも人名用漢字でもない漢字を含む出生届は、裁判所の命令がないかぎり、受理できないのです。そして、裁判所の命令を勝ち取るためには、出生届が受理されなかったという事実が、大前提として必要なのです。
ただし、出生届が受理されなかったからといって、そのまま帰ってしまってはいけません。受理されなかった出生届は持って帰ると同時に、新しい出生届の用紙をもらって、ひらがな(あるいはカタカナ)で子供の名をつけるか、あるいは「名未定」で出生届を提出しましょう。希望した名がつけられないからといって、出生届の提出をおこたるのは、親権者として最低最悪の行為です。子供を戸籍に記載しないままでほうっておくと、その子供は様々な点で不利益をこうむります。出生届は必ず提出しましょう。なお、「名未定」とした場合は、あとから追完届を提出する必要がありますし、「名未定」のままでほうっておくと、その子供はパスポートを取得できなかったりしますので、筆者個人としては、あくまで「やむをえず」ひらがな(あるいはカタカナ)で出生届を書くことを、強くオススメいたします。
母子手帳には本当の名を
でも、母子手帳の「子の氏名」欄には、その漢字で名を書きましょう。たとえ、出生届で受理されなかった名であっても、それは、あなたが決めた本当の子供の名なのです。今後、子供の名を色々な書類に記入する機会がありますが、それらにも、できるだけ本当の名を書きましょう。もちろん、この時点では、それは「通称」という扱いになってしまうのですが、子供の名にその漢字を使いたいのなら、親だけでなく、まわりの人たちにも本当の名を認めてもらう必要があるのです。ただ、出生届をひらがなで提出したなら、子供の名に「ふりがな」をつけるよう心がけましょう。「ふりがな」によって、戸籍上の名(ひらがな)と本当の名(漢字)との間で起こるさまざまなトラブルを、少しでも減らすことができるはずです。
では、戸籍に本当の名を載せるためには、どうすればいいのか。次回(第2回)は、裁判所の考え方を見ていくことにしましょう。