コンサイス仏和辞典
昭和12年(1937)3月10日刊行
丸山順太郎編/本文1002頁/三五判変形(縦152mm)
本書は三省堂における2冊目の仏和辞典で、『仏和辞典』(明治19年・1886)から50年ぶりの新刊だった。その間、大倉書店や白水社などから仏和辞典が出版されていたが、医学や軍事の分野別もあった独和辞典に比べると、点数は多くない。
フランス語の学習は当初、文学・美術や外交方面が中心であったが、やがて哲学・社会学・言語学のみならず、数学・物理学・医学などの自然科学や政治・経済・法律などの諸方面にまで及ぶようになった。そのことが、新たな仏和辞典の編纂を動機づけた。
「緒言」に挙げてある6つの特徴は、(1)万国音標文字による発音表示、(2)新語、新義を豊富に収載、(3)俗語を豊富に収載、(4)固有名詞とそれに関係ある形容詞を採録、(5)不規則動詞の変化形を見出しに掲出、(6)必要にして十分な用例の掲載。付録には「動詞変化表」が35頁ある。
体裁は、前年に出た『コンサイス独和辞典』と共通点が多く見られる。語釈は漢字カタカナ交じり文で、外来語は平仮名書きだった。難読語における括弧に入れた2行割りの読み仮名も縦書きのままである。ただし、訳語に文語形は使われていない。
編者の丸山順太郎(1882~1970)は、明治39年(1906)に共著でエスペラントの入門書を出版。大正9年(1920)にソルボンヌ大学を卒業。昭和2年(1927)に『白水社和仏辞典』を出し、フランス語関連の著書も多い。また、陸軍大学で教授を務めた。
すでに白水社は、大正10年に『模範仏和大辞典』を、昭和6年に小型の『標音仏和辞典』を刊行していた。さらに、昭和12年には『新仏和中辞典』を出すのである。そのため、白水社で和仏辞典を出した丸山は、仏和辞典を三省堂で出すことになったのかもしれない。
本書の協力者には、中平解、田辺貞之助、高山峻、土屋文吾、小関藤一郎、鈴木力衛がいた。昭和24年の改訂版では中平解の援助があったが、頁数は変わらず、奥付の版数も連続していて、次の新版(川本茂雄と共編、昭和33年)の奥付に改訂の履歴は載っていない。
新版から漢字ひらがな交じりになり、第3版が昭和47年(1972)に、第4版が昭和53年(1978)に出たあと、平成5年(1993)に『新コンサイス仏和辞典』(川本茂雄・内田和博共編)となった。
●最終項目
●「猫」の項目
●「犬」の項目