類語活用必携
昭和15年(1940)6月15日刊行
三省堂編輯所編/本文272頁/三五判(縦146mm)
本書は三省堂における最初の類語辞典である。サイズは『用字用語必携』(昭和12年)と同じで、書名に「辞典」ではなく「必携」を用いたことも共通していた。
日本語の近代的な類語辞典は、『日本類語大辞典』(晴光館、明治42年)から始まる。それを簡約化した『同意語二十万辞典』(北隆館出版部、明治43年)も出た。大正2年には、それぞれ版元や書名を変え、『国民必携類語大辞典』、『読書作文日本大辞典』として刊行されたが、昭和9年に『詩歌作文表現類語辞典』(交蘭社)が出るまで新たな類語辞典の刊行はない。
ただし、類語を載せた辞典がなかったわけではなく、『類語類例新詞藻辞典』(東光社、昭和12年)のように、類語、類句、文例などを載せたものはあった。それらは、手紙文や作詩・作歌のための文例を主体にしていたのである。
本書は、類語に特化し、類書にないハンディーサイズという点に特色があった。附録には「書翰文便覧」62頁が加えられている。
本書の見出しは発音通りの仮名遣いで、見出しの下に歴史的仮名遣いをカタカナで載せた。当時の国語辞典も、見出しは発音式が主流だったのである。『用字用語必携』は異なっていたが、見出しにも歴史的仮名遣いの語釈にも、小書きの仮名「っゃゅょ」を使っている点は同じである。
戦後は、改訂された『類語活用必携』が昭52年に出て、現在は『必携類語実用辞典』(昭和55年初版、平成22年増補新版)となった。さらに、平成17年に『三省堂類語新辞典』、平成18年に『文章表現のための類語類句辞典』、平成27年に『新明解類語辞典』が刊行されている。
●最終項目
われら〔我等〕 吾人(ゴジン)・吾輩(ゴハイ)・我輩(ガハイ)・吾曹・我曹・我儕・我徒・我們(ガモン)。
●「猫」の項目
ねこ〔猫〕 女奴(ヂヨド)・猫児・似虎・鼠将。
●「犬」の項目
いぬ 〔犬〕ケン。普通のイヌ。〔狗〕コウ・ク。犬と同じ。特に犬の子をいふこともある。〔尨〕バウ。ムクイヌ。毛の多い犬。彡は毛の長い意を示す。〔戌〕ジュツ。十二支のイヌ。