最近、滋賀県産のアニメ歌「知ったかぶりカイツブリ」【写真1】(BBCびわ湖放送・藤井組 //www.fujiigumi.com/kaitsuburi/)がホットな話題になっています。歌って踊る兄ツブリと、一緒にちょこまか動くちびツブリがアニメの中で歌っています。カイツブリは、滋賀県の県鳥です。びわ湖放送の頭にBBCがついているのも、イギリスのむこうを張っているようで意気込みが感じられます。
まずは、アクセスして、「告白の唄②」と「告白の唄③」を聞いてみましょう(Flash Playerが必要です。CDも市販されています)。
「やンス、こンス、きゃンスといえば 湖北の人なんです(いるよ、来るよ、来るよの意味)」(告白の唄②)、「野洲(ヤス)駅の看板に『おいで野洲(ヤス)』(いらっしゃいの意味)」(告白の唄③)、「『このご飯こわい』は、硬いの意味です(超こわい~ カチ・コチ)」(告白の唄③)などメロディに乗せて方言が楽しく使われています。
湖北にある長浜市の広報誌に「こんす」「きゃんす」「してやんす」が出ています【写真2】。「きゃんせ」は「いらっしゃい」に少し親しみをこめた言いかたです【写真3】。
すでに皆さんも気がつかれたと思いますが、現代の地域語の商業的利用は、「明るく使う」、「使って楽しい・うれしい」というアクセサリー的条件が必須でしょう。これまで連載でとり上げた例では、聞く(ハローキティー・自販機)、見る(アニメ)、読む(のれん・絵葉書)、触る(はんなり豆腐)、着る(Tシャツ)・味わう(酒・茶碗・ほっこり鍋・饅頭)、飾る(ホルダー)、遊ぶ(かるた)などがありますが、どれも楽しいです。
「イカイいかだでイカッタ」(リンク先は試聴用)では、「行カッタ」「行かハッタ」が引用されています。
(前略)
イカイは大きいのことYO♪
遊びにイカッタは、
怒ってるんじゃないYO(中略)
イカッタは、行かはったのことYO♪
「~ハル」は滋賀県でもよく使われます。「行カッタ」は「行かハッタ」が変化した形です。都市部を離れると、高年層は、「ラッタ」も使います。近所の知り合いで、少し年上の人のことを言う場合などに用います。「ラッタ」は、「~られた」という尊敬語です。
「野洲のおっさんカイツブリ」には、以下のような歌詞が登場します。
きらった(~こられた:尊敬語) ※(歌詞には左のように書いてあります)
しらった(~された:尊敬語)
チェケラッた?野洲のおっさん酔っ払ってらった
野洲のおっさんみたらし食ってらった(続く……)
長い沈黙をやぶった滋賀県産の方言ヒット作品と言えましょう。これらの歌詞は視聴者からの投稿によって作られています。皆さんも参加してみてはいかがでしょう。
滋賀県では、なかなか方言みやげ・グッズが見つかりません。これまで滋賀弁は、京都弁の傘にすっぽり入っていたようです。世の中、多様性に向かっています。京都弁で「そやねんで、そんでな」というのは、滋賀弁では「ほやねんで、ほんでな」となります。「ほーほー」言うなと京都の人に言われても、自信を持って、「ほーか?我らビワコ・バイリンガル!!(共通語+ビワコ弁)」と言い返す勇気が大切なのです。Viva Biwa♪ VIVA BIWA♪日本地図に琵琶湖がないと、必ず書き込むといわれる滋賀県民のことばをご紹介しました。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。