この連載で紹介している,方言の拡張活用の種類について,第31回で整理しました。その⑥を,道徳啓発のための非営利的な方言の利用の「方言看板・ポスター」としました。この種のものはほとんどが,看板やポスターを伝達媒体としているからです。
この連載でも,これまで5回,紹介しています。第8回(交通安全:大分),第24回(自転車・バイクの通行/歩きたばこ禁止:京都),第43回(自転車の通行:福岡),第63回(飲酒運転防止:宮崎),第78回(安全運転:宮崎)です。
そういうなか,看板やポスター以外による道徳啓発の方言活用の例がありました。今回は,まず,これを紹介します。
岩手県で不正軽油防止を呼びかける「絶対わがね! 不正軽油」です【写真1】。ガソリンスタンドの「レシートの裏面」を利用しています。レシートは,幅5.6cmの,スーパーなどでも使っているごく普通のものです。小さいですが,そのメッセージが一人一人に行き渡りますね。
メッセージのうち,「わがね」のところが,岩手県盛岡市あたりの方言です。意味は「ダメ」です。
元は,「わからない」です。東北地方の方言で,「ダメ」の意味でよく使われる表現です。
それがこの方言の音韻の特徴(詳細はここでは省きます)により,[ワガンネァー]から[ワガネ]と変化したものです。
今回,レシートを伝達媒体とする方式が確認されましたので,「看板・ポスター」に『類』を加え,この種のものを,「方言看板・ポスター類」と呼ぶことをあらためて提案します。
岩手の「方言看板・ポスター類」には,最近(2009年12月)出たものがあります。道徳啓発としては少々重いテーマですが,自殺防止キャンペーンのポスターです【写真2】。