今回は、しりとりゲームが終わらない県、山形県の「おいしい方言」をご紹介します。山形県では、しりとりでうっかり「ん」で言い終わっても、「しまった!」とあわてず、つぎの人が、「んまい」【写真1 おいしい】と続ければいいんです。反対の意味を表す「んまぐねぇ」(おいしくない・よくない)でもいいです。ほかに「う」が「ん」に置き換わる例として、「んだば」(それじゃ、さよなら)などがあります。
(写真はクリックで拡大します)
山形弁は、鼻音、濁音を多用すると何となくそれらしく聞こえます。というわけで、フランス語と似ているという人もいます。筆者が知っている人で、山形弁とフランス語がじょうずだと自信を持っている人がいて、確かにフランス語の発音で少し得をしているように聞こえます。(しかし、フランス語が通じることとフランス語らしく聞こえることとは違います)
「なんじょだべ」【写真2】は、「いかがでしょうか」という意味です。「なん(何)じょ(ぞ)」は、「どんな」と置きかえることができ、それに「だ(です)」「べ(か)」がついた形と考えられます。
山形弁の特徴は、ほかにもあって、「し」「す」と「ち」「つ」の区別をしません。「やさいだす」【写真3・4 野菜だし】はその例です。「知らない」が「スらない」となり、「好き」は、「しぎ」と変化します。
「ままけは(飯喰は)」(ごはんですよ)【写真5】の「け」は「食べなさい」で、一字ですんでしまいます。「け」と言われたら「く」(食べる)と答えたり、「かね」(食べない)と答えたりします。短くて余計なエネルギーを使わないので経済的です。「わらわら」は「急いで・さっさと」の意味です。
んだば
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。