プロ野球やサッカーJリーグをはじめ、各地に本拠地を置く(プロ)スポーツのチームは、何よりもまず地域密着を図り、地元ファンの声援や応援・支援を大切にし、それをパワーにして実績を挙げ、さらに広範囲のファンを獲得しようと、チーム力の強化・向上をめざしています。
その工夫の一つとして、チーム名に地元の方言を取り入れて、その地域らしさを強くアピールする方法があります。外に向かってはその土地らしさがより強く打ち出せますし、内=すなわち地元に対しては「おらがチーム」という親近感を持ってもらうことが可能になります。
フットサル(一種の5人制サッカー)も、最近人気が上昇している競技のひとつです。
Fリーグ(後述)加盟チームは、北は北海道から南は九州まで、全国に10のチームがありますが、大分では2003年に「エスペランサ」というチーム名で創設され、2006年11月に発足した日本フットサルリーグ(愛称、Fリーグ)に加盟。このときに「バサジィ大分」(Vasagey Oita)と改称し、九州地方で唯一の加盟チームとして活躍しています。
Fリーグの公式ホームページでは、各チームを紹介する欄で、
バサジィは、大分弁の「すごい」と「俊敏な」という意味と、名物のアジ、サバを彷彿とさせる造語。九州唯一の参加チームが、地元密着で旋風を巻き起こす。
と紹介されています。が、これだけではまだちょっとわかりにくそうです。
当の「バサジィ大分」のホームページの「チーム名の由来」にはこうあります。
大分弁で「すごい」という意味の「ばされー、ばさねー」と、「俊敏な」という意味の「さじい」を合わせた造語。大分名物の「アジ」「サバ」の音も含んでいる。
もう少し補足しましょう。大分の方言で〔非常に、たくさんの〕を意味する「バサレー」という言い方があります。その「バサ」と、「サジイ」を合わせて「バサジイ」です。「サジイ」は共通語の「耳ざとい、利にさとい」などの「さとい」=〔敏捷だ、すばしこい〕と関連のある語です。つまり、非常にすばしっこい、スピード感あふれるチームであるという意味を表現しているわけです。
また、いわば“隠し味”として、「関アジ・関サバ」(関は、佐賀関町の省略形)として知られる、豊後水道で獲れる新鮮な魚=「サバ」を逆にした「バサ」と「アジ」にもかけられていて、いかにも大分にあるチームであることをアピールしています。
またマスコットキャラクターは、元気な猿の男の子「バサル(VASARU)」君で、バサジィ+サルからなり、猿で有名な高崎山のある大分市のチームであることを示しています。
ホームページには「バサル日記」を連載。その中でバサル君が応援団のことを「応猿団」と言ったり、サポーターのことを「サるポーター」と言ったり、ことば遊びをしていますが、それがなかなか親しみやすくて好評だということです。
《参考》大分フットサルクラブ「バサジィ大分」(大分スポーツプロジェクト)の公式ホームページは、//www.vasagey.com/ を参照。
写真提供:大分スポーツプロジェクト
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。