3月11日午後2時46分の激しい揺れから始まった「東日本大震災」,地震本震とその約30分後の大津波の大きな被害は,皆さんも報道等で既によくご存知だと思います。尊い命をなくされた多くの方々に謹んで哀悼の意を表するとともに,被災された方々にお見舞い申し上げます。私の住む岩手県宮古市でも,甚大な被害を受けました。あれから1ヵ月経ちましたが,時が止まったようで,まだ昨日のことのようです。
そのなかで,地域語が大きな力となっています。被災民や復旧支援者が,各地の地域語で,復興の方言メッセージを掲げ,精神力を高め,体力を振り絞り,不自由な生活のなか奮闘しています。今回は,それらのほんの一部の例を紹介します。
大きく3種類になります。各々説明します。
①自衛隊の災害派遣部隊:全国各地からの大勢の支援隊が被災地を助けてくださっています。そのなかで自衛隊の災害派遣隊は,派遣先の地域語による方言メッセージをヘルメット側面に掲げています。「けっぱれ!岩手」【写真1】というわけです。宮城県では「がんばっぺ!みやぎ」【写真2】や「まけねど!女川・石巻」です。
(画像はクリックで拡大します)
②マスコミや企業,行政など:「がんばっぺし!いわて!!」(IBC岩手放送)【写真3】,「がんばっぺし宮古!」(みやこ災害エフエム)【写真4】,「みんなでがんばっぺす」(ジョイス宮古千徳店)【写真5】,「がんばっぺ三陸」(マルホンカウボーイ宮古店)【同】,「がんばっぺ!いわき」(福島県:いわき市役所)【写真6】,その他です。
③被災者など個人の手作り:「がんばっぺ!いばらき」(個人のブログ)【写真7】,「がんばっぺぇーす宮古」(岩手県宮古市:グリーンピア三陸みやこ避難所),「がんばっぺ高田!!」(岩手県:陸前高田市立第一中学校避難所)【写真8】,その他です。
こういう厳しい時にも,地域の力となり,人々を元気づける底力が,方言にはあるのです。
なお,この大震災により,これまで紹介した方言の有効活用例や関連企業にも被害が及び,中には消失したものもあります。その状況は第151回で報告する予定です。
《謝辞》
陸上自衛隊第11旅団,および,みやこコミュニティ放送研究会におかれては,当回の資料につきまして,特別の便宜を図ってくだされました。被災地での活動中にもかかわらず,ご協力を賜りましたことに対しまして,深甚なる謝意を表します。ありがとうございました。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。