東日本大震災による地震、津波と原発事故という「三重苦」で、被害を受けた方々をお見舞い申し上げます。津波といえば、石垣島で1771年に高さ85メートルの山肌まで達したと伝えられる大津波があり、住民の半数近くが亡くなりました。今回の東日本大震災でも、石垣市からは多くの義援金が寄せられました。
その石垣市では方言が元気で、店の名前で方言が目立ちます。アーケード街の商店名簿の方言店名は、20年前の3店(89店中)から、2011年には13店(102店中)に増えました。
隣の繁華街にも方言店名があります。南山舎という地元の出版社の『やえやまGUIDE BOOK』にはこの美崎地区の地図があります。尋ねて行って、最初の版から、地図のコピーをいただきました。現地と照合し、電話帳で調べ、統計ソフトに入力して整理したら、21世紀に入ってから方言店名が増えたと読み取れました。グラフをごらんください。
地元の人の話では、NHK連続テレビ小説の『ちゅらさん』のおかげということです。グラフに放送の年(続編を含む)を記しました。観光客数の増加(沖縄県八重山支庁による八重山入域観光客統計概況のPDFへ)とも関係します。
方言店名については、このシリーズの第127回、第132回で世界の分布を扱っています。『明海日本語』16号にも論文が載っています(『明海日本語』のページに論文のPDFが公開されています)。大阪市の方言店名は1980年代に増えたようです。全国の動き、そして世界の動きはどうでしょう。実はUNESCOでは、石垣島を含む沖縄県南端のことばを、絶滅の危機に瀕した言語と扱っています(UNESCO Atlas of the World’s Languages in Dangerのページへ)。だとすると、世界各地の言語復興運動と連動していると、みることができます。
これから方言店名がどうなるか、追跡したいところです。新たに生まれた方言店名は、住宅地図で探せます。今の店がいつまでもつかは、インターネットの電話帳で分かります。
そんな趣味の方のために、2011年現在の石垣市美崎町の方言店名(計25種)を(掲載年の古いものから)リストにしました。
【1.今も存在する店名15】 ゆうな マーミヤ ぐるくん亭 まーさん道 ゆくい スブンテ ゆんた ゆらてぃく てぃーだ やいま日和 tilla earth(ティーラアース) ニーランカーナン やーちゅー ふがらっさ SANSIN
【2.今はない店名6】 ばがー島 かりゆし ウムッシャ とーい なんくる亭 やいま
【3.南山舎から「ある」とご教示いただき、インターネットの住宅地図にもあるが、インターネットの電話帳で出ない店名(集計表に算入)2】 美ら島屋 花ぐるむ
【4.新たに見つけた店名(集合ビルのスナックなど)2】 マヤマヤ にいにい