「地域語の経済と社会」の調査対象となる、さまざまな実例が採集できる街・十日町市(新潟県)をご紹介します。(今回の範囲は、JR線・ほくほく線十日町駅から徒歩15分以内です。)
まずは十日町市博物館へ
新潟県下唯一の国宝・火焔型土器を目当てに十日町市博物館へ向かい、ミュージアムショップのコーナーをのぞいてみると――。
そこには、十日町市博物館友の会「方言を楽しむグループ」の皆さんが作成された方言手ぬぐいが3点【写真1~3】、さらに、同会・方言研究グループ発行の方言研究書『はちゃ 中魚・十日町の暮らしと方言①』も並べられています。
いずれも、郷土と郷土の言葉を愛する気持ちが伝わってくる力作です。
商店街を歩く
十日町駅に戻りがてら、地元の物産を販売する「キナーレ」(第85回で紹介)にちょっと寄り道。
駅を背にして、商店街を歩き始めます。有線放送からは十日町弁で、地元の話題が語られています。
随所に貼られた十日町市観光協会のポスターには、
「いいとこだぜの、とおかまち」[=いいところですよ]
「だんだん どうも」[=いつも どうも]
の標語があしらわれています。お店の看板も十日町弁で呼びかけています【写真4】。
歩き疲れたので、喫茶店をさがすと、「ほんやら洞」[=かまくら]というお店がありました。
さらなる方言グッズを求めて、和菓子の木村屋を訪ねると、そこは方言和菓子の宝庫。
「なじょだの」[=いかがですか]
「つぼんこ」[=雪玉]
「おこめし花」[=しょうじょうばかま]
「あちこたね」[=心配ない]
「だんだん どうも」[=いつも どうも]
などのネーミングで、和菓子がずらりと並んでいます。
十日町弁を愛する小林博さん
地元紙・十日町新聞には、次のような広告が載っています。
ようやっと貝類に肉がついてきた。白みの魚も、
いかの赤ん坊もうまくなってきたぜの。
食欲の秋、うめぇもんをちっとなじだの。一ヶでもいいやんだぜの。加賀町の 松乃寿司
広告の主は、小林博さん。実は最初に紹介した方言手ぬぐいや方言研究書は、小林さんが中心になって作成されたもの。十日町弁の広告も、50年以上続けているそうです。
街歩きをたっぷり楽しんで、仕上げに小林さんのお店で十日町弁に浸る。実りの多い一日となることでしょう。
帰路には、駅でもうひと稼ぎできます【写真5】。