(菊武学園タイプライター博物館(8)からつづく)
菊武学園タイプライター博物館には、「Oliver No.3」も展示されています。「Oliver No.3」は、シカゴのオリバー・タイプライター社が、1901年頃から1906年頃にかけて製造したタイプライターです。同社のタイプライターの特徴は、左右に翼のようにそびえ立った逆U字型の活字棒(というよりは活字翼)であり、「Oliver No.3」も左右それぞれ14本ずつの活字翼を備えています。
28個のキーからは、左右14個ずつのキーに分かれて、背面の奥に繋がる長いシャフトが伸びています。各シャフトは、それぞれが活字翼につながっており、キーを押すと対応する活字翼が打ち下ろされて、プラテンの上に置かれた紙の上面に印字がおこなわれます。いわゆるダウンストライク式であり、打った文字がその瞬間に見えるのです。また、活字翼が左右にあるので、真ん中に印字された文字が邪魔されずに見える、という特長があります。
活字翼には、それぞれ活字が3つずつ埋め込まれていて、プラテン・シフト機構により、84種類の文字が印字できます。「CAP」を押すと、プラテンが奥に移動し、大文字が印字されるようになります。「FIG」を押すと、プラテンが手前に移動し、数字や記号が印字されるようになります。ただし、菊武学園の「Oliver No.3」では、2つあるシフトキーのうち「CAP」の方が取れてしまっていて、残っているのは「FIG」だけです。また、28個のキーのうち、左下の「&」も取れてしまっています。
「Oliver No.3」のもう一つの特徴は、マージン機構が導入されていることです。様々な幅の紙を扱うために、印字をおこなう範囲を設定できるようになっているのです。また、印字をおこなう範囲を設定できるだけでなく、印字中にどうしてもマージンを越えたい場合には、臨時にマージンを外す仕掛けが準備されているのです。具体的には、中央の「Right」キーを押すと右端のマージンが外れて、さらに右側に印字できます。あるいは、右上の「Left」キーを押すと左端のマージンが外れて、さらに左側に印字できます。ただし、菊武学園の「Oliver No.3」では、マージン機構がうまく働かず、実際の動作は、筆者には確認できませんでした。