アルゼンチンの鉄道の歴史は、中南米ではもっとも古く、1857年頃イギリスの技術を導入して、フェロカリル・オエステ(Ferrocarril Oeste・西鉄道)が敷設されたと言われています。ちなみに日本の鉄道の開通は、1872年の新橋―横浜間が最初です。
1913年にアルゼンチンのブエノスアイレスで地下鉄が開通したとき、スペイン本国に地下鉄はまだ存在しませんでした。アルゼンチンでは、「鉄道」の“ferrocarril”との区別が必要になって、“subte”(スブテ)としました。“subte”は、Google mapでは、アルゼンチンを中心に分布しています(【写真1】2011/04/26現在、以下のmapも同日)。
(画像はクリックで拡大します)
もともと“subte”は、“subterráneo”の略称で、“sub-”は、「下」という意味の接頭辞、“terráneo”は「地面」です。
スペイン語の“metro”(地下鉄)は、アルゼンチンの“subte”開業から6年後にスペイン本国(1919年)で採用されました。Google map【写真2】では“metro”の使用度数(29,774,925)は、“subte”(1,150)にくらべて非常に高く、英語圏、フランス語圏、スペイン語圏などで用いられています。「地下鉄」以外の喫茶店やホテル、通りの名前などにも使われます。
“metro”は、地下鉄が世界ではじめてイギリスで開通(1863年)したことと関係があります。イギリスでは、メトロポリタン鉄道会社が、蒸気機関車だったので、吹き抜けトンネルのような構造の地下鉄をロンドンに作りました。1900年にパリ万博にあわせてパリ市内に地下鉄ができたとき、「メトロポリタン」(語源は、ギリシャ語の“metropolis”大都市)を、フランス語訳(métropolitaine)し、短くして「メトロ」(“Métro”)としました。それが世界に広まったとされています。
日本では、2004年に帝都高速度交通営団の民営化にともない、東京地下鉄と改名し、「東京メトロ」の愛称で呼ばれるようになりました。
世界に先がけて地下鉄を走らせた老舗のイギリスでは、「メトロ」という呼びかたは、一般的でなく「アンダーグラウンド」、通称「ザ・チューブ」(the tube・管)と呼んでいます。
「アンダーグラウンド」も「地下鉄」も“subte”も、地上を走る部分があれば、名前と一致しないことになります。「母、大」を語源にする“metro” にはこの矛盾が起こりません。Wiktionaryによると、世界の多くの言語で「メトロ」は「地下鉄」の意味で使われています。スペイン語圏における、南アメリカとヨーロッパの大きな方言差もこの反映なのです。
なおGoogle mapの活用法は第127回に、活用例は第132、137、142回に出ています。
(参考web)
//www.uraken.net/world/wrail/wrai53.html
//www.tfl.gov.uk/modalpages/2625.aspx