第85回で取り上げた「もてなしの方言(長野・新潟/落ち穂ひろい)」のうち、長野県内の用例を補足します。
語例 | 地域 | 方言区画 |
1 おいでなして | 長野市 | 〈北信〉 |
2 おいでなんし | 小海町 | 〈東信〉 |
3 おいでなんしょ | 飯田市 | 〈南信〉 |
ながの観光コンベンションビューロー作成のポスター用の壁紙のみを掲示しているお店を、長野市内でたまに見かけます【写真1】。
南佐久郡小海町は、「おいでなんし 小海町」を町全体で観光の合言葉に掲げています。JR小海駅構内の看板【写真2】、駅前の観光案内板【写真3】、駅前のベンチ【写真4】などに、その用例が見られます。
先ごろ、松原湖観光案内所で行われた、町の物産や観光スポットなどを紹介するイベントも、「おいでなんし 小海町」がメインタイトルでした【写真5・6】。
以前、小諸市内のホテルにも、入口に「おいでなんし」の看板を掲げているところがありましたが、今ははずされています。地元の方に伺うと、明治20年代生まれの方が、昭和30年代までは使っていたが、現在、使う人はいないとのこと。小海町でも、若い世代は使わない、とのことで、地元の方に向けては、郷愁を誘うキャッチフレーズともなっているようです。
南信では、中央道飯田ICを降りたところに、歓迎のメッセージとして、「おいでなんしょ」の看板が立ち【写真7】、さらに、そのすぐ近くのガソリンスタンドの看板にも使われています【写真8】。(第44回の天龍村の例に、今回、飯田市の例が加わったことになります。)
「なさります」の変化形「なんす」の命令形「なんし」に、助詞の「よ」が付くか、付かないかで、南信・東信の地域差が出ています。
残念ながら、まだ中信の使用例が見つかっていません。読者のみなさん、ご存じありませんか。