第146回で「『地域語の力』~東日本大震災復興の方言メッセージ」として,「がんばっぺ高田!!」などの例を紹介しました。この活用法を「方言エール」と呼びましょう。
震災直後に,生存者が命をつなぐ,という切実な状況下で自然に出て,3ヵ月経過し,手作りから業者製品になってきました。
下の代表例の表の①②③(第146回と同じ分類)をご覧ください。方言エールは,表現が類型化されています。構成は「エール+地名」が基本です。エールの部分は,各分類で傾向があります。自衛隊では,命令形「けっぱれ」や勧誘の「がんばっぺ」(第146回で紹介)のほか,意志の「まけねど!女川・石巻」もあります。企業や個人では,ほとんどが勧誘です。「おらもがんばる」は意志のようですが,「-も」により全体は勧誘の意です。
①自衛隊【写真1=①A】
記号 エール 掲出者,掲載場所 ①A けっぱれ!岩手・山田町 陸自(岩手),岩手県山田町役場 ①B けっぱれ!岩手 陸自(岩手),岩手県大槌町内避難所 ①C けっぱれ!岩手 陸自(青森),岩手県宮古市内避難所 ①D まけねど!女川・石巻 陸自(香川),宮城県石巻市
②企業など【写真2=②A】
②A がんばっぺす宮古 株式会社文化印刷,岩手県宮古市 ②B おらもがんばる 同上,同 ②C みんなでがんばっぺす宮古 ジョイス宮古千徳店,同 ②D ガンバッペシ山田宮古! 咖喱〔カリー〕亭,同 ②E がんばっぺす三陸 けっぱれ宮古 ガソリンスタンド,同 ②F がんばっぺす!みやこ(Tシャツ) 販売員,同 ②G がんばっぴし宮古 高屋敷整骨院,同 ②H 大船渡やっぺし祭り(ポスター) 同祭実行委員会,岩手県大船渡市
③個人作製【写真3】
③A 頑張っぺ 福島・東北・日本(ワッペン) 非営利会システム FRIENZ会
④関連(支援や謝辞)方言メッセージ【写真4=関A】
関A おでんせ ふじ丸 客船ふじ丸=被災民への食事やカラオケの提供支援 関B どうも おおきに 宮古駅前交番=救援隊への謝辞と慰労 関C およれんせ!末広町 宮古あきんど復興市=津波被災商店街のイベント
地域語は,厳しいとき人々を元気づけるのに共通語より直に心に響きます。私自身も,被災地生活者の一人として再建に努力します。
なお,第151回で方言の有効活用例の震災被害を報告しましたが,大きな損傷を免れたり,業務再開に向け努力している例もあります。それらを第161回で紹介する予定です。