このシリーズ第155回長野県の「もてなしの方言」には見覚えがあります。グーグルマップで調べました。「なんしょ」を引くと、まずその名の店が出ます。図1左の例をよく読むと、クチコミの使用例が多く、東京付近では「なのでしょう」を縮めた「なんしょ」が使われ、関西では「何しよる」の変化「なんしょん」が使われます。この際無視しましょう。もてなしの方言の「おいでなんしょ」や「~てくなんしょ」は、長野県南部以外に、福島県と九州の一部で使われていると、分かりました。
似た言い方の「らんしょ」のグーグルマップ日本分布図をみると(井上2011「Google言語地理学入門 Introduction to Google Linguistic Geography」『明海日本語16』PDF)、福島から静岡にかけてで、使用地域はやや狭いです。
日本語の歴史をみると、①古代には目上にも目下にも動詞の命令形を使っていました。②中世に目上に動詞の敬語の命令形を使うようになり、③今は「てください」「てもらえませんか」などを付けた、長い間接的な表現が使われます。「なんしょ」は、②の敬語の命令形で、古い言い方が方言に残ったものです。店や施設で人を呼び込むための表現として、各地でこの類の方言が再活用されています。勧誘・もてなしの方言も、全国を見渡し、日本語の歴史とからめると、新たな位置づけができます。
グーグルマップで、日本中、世界中のことばの使い方が分かります。グーグルマップの活用法は第127回に、活用例は第132, 137, 142, 154, 159回に出ています。