「東日本 おうえんしまっせ~!」【写真1】は、大阪でたまたま入ったたこ焼き屋さんの壁に貼られていたものです。
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今、街角では、「がんばろう」「きずな」「つながり」など、日本が元気を取り戻すために何かをしようと呼びかけるスローガンが、たくさん見られます。「応援しまっせ~!」も「いたわりの方言」(第149回)の一つです。売上金の一部を義援金として寄付すると書いてありました。同じ場所に、「ホントにありがとう!!」「ありがとう感謝です!!!」「大阪サイコー!!岩手サイコー!!」「本当にうれしかったです。ありがとうございます。がんばります。」などと、返事が書かれていました。のんきにたこ焼きなど食べに入ったのですが、(たこ焼きは全部平らげた上で)さわやかな気持ちで店を出ました。
「がんばる」について、(ポライトネス理論でいう)心理的負担度から考えてみると、①「けっぱれ」(第156回・がんばれ)(命令形:被災地の方々にさせる)を、無念でつらい思いでいっぱいの被災地の方々に使うのは、無情というものでしょう。一方、②「がんばっぺ」(がんばろう)は、勧誘形で、自分も被災者もいっしょにがんばるという意味になります。③「応援しまっせ」は、自分がするから、被災地の方々は何もしないでいいという意味合いです。
「おうえんしまっせ~!」に関連した表現をGoogle mapで調べると、①「けっぱれ」(23件・2011/06/21調べ)は、北海道、青森、東京、名古屋で、被災地の外側に分布しています。東京、名古屋は、青森豚そばなどの店の例です。②「がんばっぺ」(【写真2】101件・同日調べ)は、宮城県、福島県、茨城県、東京都で、被災地に分布しています。東京都はおそらく東北地方出身の方が書き込みなどされたのでしょう。共通語の①「がんばれ」(【写真3】5564件・同日調べ)は、全国的で、①「けっぱれ」②「がんばっぺ」と互いに補いあって重ならない地域に分布しています。
被災地の方々には、③「応援しまっせ~!」が心理的負担度をもっとも軽減できるメッセージといえましょう。大阪から「がんばれゆうな、みんな、がんばっとんねん」という声が聞こえてきそうです。阪神淡路大震災を経験した地域だからこそと思えます。しかし、最近の理論によると、言語表現に細やかな配慮を込める関西人だからこそ出る発想とも考えられます。
第149回、第151回、第156回にも関連記事が掲載されています。Google map関連データは、第157回などを参照してください。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。