世界の共通語といわれる英語ですが、それぞれの地域によって英語にも方言があります。日本人が話す英語も方言なのです。地方色をいかして、堂々と話しましょう!!
今回は、カナダのオンタリオ州ロンドン市の英語方言を中心に紹介します。“laundromat”【写真1】は、コイン・ランドリー(和製英語)です。“laundro”は、“laundry”で、“mat”は“automatic”つまり オートマチックな洗濯屋というわけです。“coin wash”【写真2】という看板もありました。小銭のコインを洗ってくれる?と誤解して店をのぞいてみると、コイン・ランドリーでした。“coin wash”は、アメリカ東部でも使用されていますから、国境を越えて侵入したのでしょう。
(画像はクリックで拡大します)
次の例は、モンゴル料理の店内で見つけた“washrooms”(お手洗い【写真3】)です。男女別に2部屋あるので複数形になっています。Google mapsで確認してみると、“washroom”(ヒット件数11266件・2011/9/8調べ)は、カナダのロンドン市を含むオンタリオ湖周辺、アメリカも東部カナダ国境近くに分布が集中しています。イギリスの中南部、マンチェスターやロンドン(イギリス)周辺に分布することから、イギリス英語の影響が考えられます。
一方、“restroom”(ヒット件数104360件・同日調ベ)は、アメリカを中心として用いられ、イギリスでもカナダでも、あまり使用されないようです。Charles Boberg(2011)の研究によると、カナダにおける“washroom”の使用率は、51%とされています。
次の【写真4】“CANAJAN, EH”は、ロンドン市(カナダ)の図書館で見つけた本の表紙です。“CANAJAN”(Canadian・カナダ人)は、カナダ人が話す英語の発音を表しています。“EH”は、“right?”“don’t you think so?”(でしょ?)の意味です。
言葉は、遠くからのおおぜいの人の移動にともなって伝わる場合、遠隔地への飛び火、古語残存など、さまざまな方法で伝わります。
参照:Charles Boberg(2011)Methods in Dialectology 14 ハンドアウト
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。