勢い良く自転車を走らせているのは、競輪のポスターです【写真1】。「ぶちカマシチャリんさい。」の広島弁の説明も書かれていたのでそれを参考にご紹介します。「ぶち」は「すごく、とても」など、強調の表現で「ぶちはがええ」(すごく腹が立つ)などと言います。
「カマシ」はチャンスをねらって一気にスパートをかける戦法を意味します。また「~シチャリんさい」は「~してあげなさい」というやさしい命令形です。親しい相手を励ましているようです。「チャリ」(自転車・チャリンコの略・詳しくは第43回参照)と「~シチャリ」(~してやり)をかけています。
(画像はクリックで拡大します)


右:【写真2 「のりんさいくる」】
「のりんさいくる」【写真2】もよく似た例です。「乗りんさい」(乗りなさい)と「サイクル」(自転車)に方言をじょうずに乗せています。
さて、次の【写真3】はおみやげとして販売されていました。真っ赤な布にハートマークの鯉が泳いで、「恋じゃけえ」と書かれています。宮島のもみじも描かれています。広島弁は「じゃけえ」「じゃけん」「じゃけえの」(だから)などを文末に使います。


右:【写真4「はんざき」】(クリックで全体を表示)
「はんざき」【写真4】というのは「オオサンショウウオ」の別名ですが、広島市に日本一大きいオオサンショウウオの標本があることから、「はんざき」のいろいろな動作が広島の方言絵葉書で紹介されています。「はんざき」とは、からだを半分に裂いても生きていそうだからとか、からだが半分にさけるほど口が大きいなどという由来があります。
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。