地域語の経済と社会 ―方言みやげ・グッズとその周辺―

第185回 大橋敦夫さん:「ご当地マスコットがしゃべった!」

筆者:
2012年1月21日

「ゆるキャラ」と称され、全国各地で親しまれているご当地マスコット。名産品などにちなんで作られるものが多い中にあって、ありそうでなかったのが、ご当地のコトバをしゃべるマスコット。

が、ありました!その名も「いまばりゆるきゃら バリィさん」(愛媛県今治市)。

【いまばりゆるきゃら バリィさん「ステッカー」】
【いまばりゆるきゃら バリィさん「ステッカー」】

2009年5月、瀬戸内しまなみ海道(尾道市~今治市)10周年を盛り上げようと製作されました。

焼き鳥日本一のまち・今治生まれということで、トリがモチーフ。今治タオルの腹巻をし、来島海峡大橋形の王冠をかぶり、手には船の形の財布を持っています。そして、今治地方の方言を使いこなすことも、大きな特徴とされています。

「いまばりのことしっとるで? なんでもきいとん おしえたるけん!」のセリフにたがわず、今治弁講座も開いてくれています。

(クリックで拡大表示します)

【いまばりゆるきゃら バリィさん「手ぬぐい講座」】
【バリィさん「手ぬぐい講座」
【いまばりゆるきゃら バリィさん「メモ帳」】
【バリィさん「メモ帳」】
 

このほかにも、ゴーフレット・クッキー・ドーナッツ・お酒・フィナンシェ・ふりかけ・Tシャツ・クリアファイル・カレンダー・年賀状・ぬいぐるみ・ストラップ・ノートといった提携商品が作られています。

あえて今治弁を語らせた点について、製作サイドでは、

「今治弁がどんなものなのか、たくさんの人に知ってもらいたいと思っています。それと同時に、今治から県外に出られている方々には、なつかしんでもらいたいと思っています。方言は、人の心をあたたかい気持ちにする力があると思いますので、これからも今治弁で話していくつもりです。」

とおっしゃっています。

東京都内のアンテナショップでも、懐かしがっているお客さんが多く、地元で親しまれているマスコットだということがよくわかります。

筆者プロフィール

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics

井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。

(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

 

  • 大橋 敦夫(おおはし・あつお)

上田女子短期大学総合文化学科教授。上智大学国文学科、同大学院国文学博士課程単位取得退学。
専攻は国語史。近代日本語の歴史に興味を持ち、「外から見た日本語」の特質をテーマに、日本語教育に取り組む。共著に『新版文章構成法』(東海大学出版会)、監修したものに『3日でわかる古典文学』(ダイヤモンド社)、『今さら聞けない! 正しい日本語の使い方【総まとめ編】』(永岡書店)がある。

大橋敦夫先生監修の本

編集部から

皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。

方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。