このシリーズでは、地域語(方言)の経済的活用例を扱ってきました。約300回で多くの方言グッズや方言メッセージが集まりました。日本全国の様子が分かったし、世界の状況もつかめました。数え方は色々ありますが、最低400例は紹介できました。日本と何かと似ているのが、韓国です。このほど韓国国語院から「地域言語文化商品開発」についての報告書が出ました【写真1】。政府機関が乗り出して事例調査をし、商品開発アイディアの公募展を開催して、方言普及の基盤を作るそうです。
(クリックで拡大表示)
報告書は写真入りで、見て楽しめます。写真の半分以上が、日本の例で、全233種(買える方言170、買えない方言63種)です。日本在住の研究者が丹念に記録したおかげです。韓国の事例は268種(買える方言99種、買えない方言169種)だそうですが、収録画像は100枚以下です。かつてインターネットでのバーチャル方言博物館を計画しましたが、韓国の報告書とこの三省堂のシリーズは、方言博物館の図録のようなものです。
三省堂のシリーズで全国から多くの例が集まったおかげで、どの県に多いか、少ないかが分かりました。テーマや種類も、各執筆者が新鮮さを求めたおかげで、多様になりました。理論分類もなされました(第226、231、236回)。種類ごとにいつ頃から出たかという歴史的観点での整理も進んでいます(第227、261、292回)。どんな商品・施設にどんな方言が使われるかの傾向も見えてきました(第69、134、143、155回)。またエッセンスをまとめた本『魅せる方言』が出版されました。
民衆による方言の社会的位置付けを示す一級資料として、方言グッズや方言メッセージが重要だと、知られてきたようです。方言学の国際会議やインターネットジャーナルでも方言商品が紹介されるようになりました。
バルセロナ大学の出版物 Dialectologia の該当英語論文へ
www.publicacions.ub.edu/revistes/ejecuta_descarga.asp?codigo=725
※クリックをするとPDF(10.2MB)のダウンロードが始まります。
この分野の今後の大発展を期待しましょう。