岡山県は「晴れの国」というキャッチフレーズがあるように,瀬戸内・山陽路にあって,海と山の幸に恵まれ,気候も温暖な土地柄です。(第223回「『グルグルおかやまB級グルメ』で地域おこし」を参照)その岡山がいま,地元の方言「もんげー」をキーワードにして,県を挙げてキャンペーンを展開。岡山県の存在感と魅力をアピールしてイメージアップを図っています。
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県の公聴広報課によると,2014年度から今回のこの取り組みをスタートさせました。その「シンボルになる語」の候補になったのは地元出身の3人が推薦する〔非常に〕を意味する岡山の方言で,インターネットを活用して投票(2014.9.9~9.15)を呼びかけました。ロック歌手=葛城ユキの推す「でーれー」,作家=岩井志麻子の推す「ぼっけー」(第269回「「ぼっけぇ」岡山」を参照),それにタレント=桃瀬美咲の推す「もんげー」の3語で競った結果,「もんげー」が48%の票を集めて1位になりました。2位「ぼっけー」,3位「でーれー」でした。(//www.pref.okayama.jp/chiji/kocho/hareoka26/hareoka_2612/html/sp1.html参照)
「でーれー・ぼっけー」に比べて「もんげー」は地元でも知名度は高くなく,テレビの人気アニメ番組『妖怪ウォッチ』に登場する,神社の狛犬(こまいぬ)の妖怪「コマさん」が口癖として発することばが「もんげー」で,これは全国的に知られており,特に子供たちや若い世代に親しまれていることなどが投票にも反映されたのではないかと見られています。
地元の人たちにとっては,いわばダークホースの「もんげー」がキャンペーンのキーワードとして選ばれたのですから,ちょっと,否,でーれー意外な展開だったわけです。以後,「もんげー」を前面に押し立てて活動が繰り広げられることになりました。【写真1・2】 「でーれー」を推した葛城ユキも,PR用テーマソング『もんげー岡山!』では,方言の歌詞を力強く歌っています。
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では「もんげー」とはどういう意味のことばでしょうか? 『日本方言大辞典』(小学館)で「もんげー」を探すと「ものげー」を見よとあり,その「ものげー」を見ると,意味は〔たいへん,ものすごく〕とあり,使用地域としては岡山県が,また異なる語形として「もんげー」には岡山県と香川県が,「もんがい」には岡山県が挙げてあります。
県では伊原木隆太(いばらぎ・りゅうた)知事が先頭に立ち,PRに大層力を入れています。ディズニー映画とタイアップしたり,ロゴマーク(「もんげー」と言うときの口の形を象ったものの由)とバッジを作り,マークは誰にでも自由な使用を認めたり,岡山県のファンになって応援してくれる人を「もんげー部」の部員にしたり,さらには「晴れの国」にちなんで「8092人」を目標に「岡山に移住しませんか? 岡山県でもんげー未来を!」と,岡山に移住して来る人たちを広く募集しています。
ふつうメジャーな方言があればそれを活用しそうなところですが,マイナーな語である「もんげー」を選んでの今回の“認知度向上とイメージアップ大作戦”。それが今後どういう効果を発揮するか,ぼっけー珍しいケースとして,方言研究の面からも注目されます。