ドイツ語にはいわゆる分離動詞が多数あり、それらは、名詞+動詞、形容詞/副詞/分詞+動詞、動詞+動詞、といった構造をもっている。
まず名詞+動詞であるが、Rad fahren, Auto fahrenなどのRad、Autoは名詞として独立性が強く、全体が句として意識されるため2語に書かれるのに対し、teilnehmen「参加する」、stattfinden「行われる」などは本来のteil「部分」、statt「場所」という意味が薄れてしまったためにいわゆる分離動詞として不定詞、分詞は1語に書かれる。
新正書法ではeislaufen「スケートをする」はいわゆる分離動詞とみなされているが、maschineschreiben「タイプライターで打つ」という形はなく、熟語としてMaschine schreibenと2語に書くものだけが認められている。これはeisは「スケート場」のことであり、Eisはふつう「氷、アイスクリーム」を思い浮かべるからであろうか。
achtgeben「気をつける」はいわゆる分離動詞として不定詞、分詞は1語に書かれるが、人称変化した場合はachtとgebenが離ばなれになる。achtはAchtと大文字書きをしてAcht gebenという句とすることも認められている。
danksagen「感謝する」の場合はさらに複雑である。これは人称変化するときはich danksageのようにいわゆる非分離動詞であるが、Dank sagenという句の形も認められていて、それが人称変化すると分離動詞のようにich sage DankとなるがDankは小文字では書かない。danksagenの不定詞形、分詞形はdank[zu]sagen, dankgesagt, danksagendであり、これだけを見るとdanksagenはいわゆる分離動詞だと思える。
maßregeln「処分する」、handhaben「取り扱う」などはいわゆる非分離動詞として、人称変化形も不定形も常に1語で書かれる。これはMaßregel「対策、処分」、Handhabe「手がかり、取っ手」という複合名詞が先にあって、それを動詞化したものだからである。しかし、staubsagen「掃除機をかける」はほんらいStaubsauger「掃除機」という名詞からいわゆる逆成によって造語されたものであり、常に1語として書かれるべきものであるが、Staub saugenと2語に書くことも認められている。