フランスあたりの日本通がスシや刺身への蘊蓄は当たり前で、和菓子にまでこだわりを見せるのは知られた話だが、一般にはヨーロッパ人に和菓子は喜ばれない。われわれ日本人も冷静になって考えてみれば和菓子の八割方は小豆で出来ているのに気付く訳なのだが、あの「甘くした豆」というのがピンと来ないらしいのだ。フランスには「栗のジャム」というのがあって(ボンヌママン社のものが日本でも簡単に手に入る)、あんこや汁粉のような味に慣れているのかもしれない。因みにこの「栗のジャム」を私は好きだが、一般に日本人はそんなに好まない。私にだってもちろん、小布施堂の「栗鹿の子」の方が遙かに美味しいのは分かっている。
こういう高級和菓子の話ではなくて、洋菓子とも呼べない日本の駄菓子を結構ドイツのスーパーで見かけて驚くことがある。たとえば「コアラのマーチ」は定番のように置いてある。そう言えば以前何かの日本のテレビ番組で見かけたが、フランスの有名料理人を集めて日本の駄菓子の食べ比べをしてもらったところ、一番美味しいと意見が一致していたのが「コアラのマーチ」だった。駄菓子の中では、ということだろうが。
また「ポッキー」も人気がある。ただし「ミカド」という商品名で売られている。これは「ミカド」というゲームの駒に形が似ているからだ。「ミカド・ゲーム」は、筮竹から来たという細い棒を41本がさりと山にして、その折り重なった中から一本ずつ他のを動かさないように抜いていくという、「将棋くずし」のようなゲームである。この棒がミカドだのサムライだのBonze(坊主)だのと、端に塗った色で区別してあって、抜き取ったときの得点が決まっている。この棒が「ポッキー」に似ているというのである。
ドイツ人は何でもチョコをかぶせないとお菓子と認めないようなところがある。「コアラのマーチ」も「ポッキー」もちょうどのその感覚にマッチしたのではないかと思っている。