前回は相手の意見、主張などに対して積極的に賛意を示す表現をみてきました。今回は単語 idea が使われているコメント表現を考えみます。
まず、よく耳にする表現に ‘(That’s a) good idea.’ があります。本辞典では立項していませんので、三省堂コーパスから用例をみてみましょう。
‘What are your plans tomorrow?’ ‘I want to go into Manhattan.’ ‘That’s a good idea. It’s a great town, New York.’ 「明日の予定は?」「マンハッタンの街の中を見てみたいんだ」「それはいい。すごい町だからね、ニューヨークは」/‘Why don’t we have lunch together?’ ‘Good idea. Shall we say 12:30 at the reception?’「昼食をご一緒にどうですか」「いいね。じゃあフロントのところに12時半ということでどうでしょう」
この表現はおもに相手の主張、提案などに対する賛意を示します。ちなみに、questionを用いた ‘(That’s a) good question.’ は文字通りの意でコメントすることに加え、その質問が答えにくい、痛いところをついた質問であることを示唆するコメント表現です。本辞典からの引用です。
2 (即答するには)難しい問題だ “Will the boss allow you to do that?” “That’s a good question! … I don’t know.” 「部長はそれをあなたにやらせてくれますかねえ」「難しい問題だねー. 私にはわからないよ」 (◆時間を稼ぐために間を置くことが多い)
3 〈質問に答えられずに〉いい質問をするねえ “Why didn’t you ask for his permission?” “Good question.” 「なぜ彼に許可を求めなかったんですか」「いい質問をするねえ」
idea に戻りますが、‘That’s an idea.’ は相手が言った主張、意見が考慮に値するものであるという含みをもっています。以下は本辞典からの引用です。
1 〈相手の提案を受けて〉それはいい考えだ, そうだね “Where can I find a plate like this broken one?” “Couldn’t your sister still have some?” “That’s an idea!” 「この割れたのと同じお皿, どこに行けば見つかるかな?」「妹さんがまだ何枚か持っていないかしら」「おーっ, そうだな」.
2 〈前向きに納得して〉それもそうだね 《家族団らんの場で》 “Do you have any good plans for the holiday this summer, daddy?” “Well, for now I have no idea.” “Then how about going to Australia?” “Ah …. That’s an idea.” 「パパ, この夏休みのプラン考えている?」「そうだなあ, 今のところは何も」「じゃあ, オーストラリアへ行くっていうのはどう?」「あー, それもいいな」.
他方、同じく単語 idea を使うのですが、相手のことばに否定的な気持ちを表すコメント表現に ‘The very idea (of it)!’ があります。本辞典からの引用を示します。
1 〈相手の言動に対して〉何てばかな!, とんでもない!, ひどい! The very idea! Playing in the snow in your bare feet! You’ll catch your death of cold! まあ, あきれたわ! はだしで雪の中で遊ぶなんて! ひどい風邪をひいちゃいますよ / You can’t go outside wearing that. The very idea of it! それを着て外へは出られませんよ. とんでもない!
2 〈第三者の言動に対して〉ひどい!, とんでもない! “The children want you to take them to school in your car.” “The very idea!” 「子どもたち, あなたの車で学校に送ってほしいんですって」「何言ってるんだ!」 / That woman never guesses my feeling. She asked me to work on Saturdays and Sundays. The very idea of it! あの人には, 私の気持ちなんてわかんないわよ. 土曜日も日曜日も働けって. ひどいわ!
いずれも very を用いて「とんでもない」という気持ちを強めています。