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JR東西線の新福島駅すぐそば、伊藤事務機タイプライター資料館を訪問してきました。完全予約制の私設博物館ですが、伊藤事務機が創業して以来のコレクションである、約100台のタイプライターが展示されています。
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コレクションのうちの1台、「Remington Standard Typewriter No.7」は、製造番号が189331と記されており、1906年頃の製造だと考えられます。前面の向かって左側にプラテン・シフト機構を補助するバネが付いており、左右いずれかの「SHIFT KEY」を押している間だけ大文字が、「SHIFT KEY」を離すと小文字が、それぞれ印字されます。このプラテン・シフト機構により、42キーで84種類の文字を打ち分けられるのです。
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伊藤事務機の「Remington Standard Typewriter No.7」には、キーボードのすぐ奥に「MADE AT ILION, NEW YORK, U.S.A.」と記されています。44キーのキーボードは、いわゆるQWERTY配列で、下段の左右の端に「SHIFT KEY」があります。数字の「1」と「0」はキーボード上になく、それぞれ「l」(小文字のエル)と「o」(小文字のオー)で代用していたと思われます。また、最上段のシフト側に「$」が見当たらず、代わりに「£」が見えることから、あるいはイギリス輸出用のモデルだった可能性が考えられます。
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上面のプラテンを持ち上げると、中には42本のタイプバー(活字棒)が見えます。タイプバーはそれぞれがキーにつながっており、キーを押すとタイプバーが跳ね上がってきて、プラテンを下げた状態ならば、プラテンの下に置かれた紙の下側に印字がおこなわれます。すなわち、この「Remington Standard Typewriter No.7」は、いわゆるアップストライク式のタイプライターで、プラテン下の印字面がオペレータからは見えません。しかしながら1906年の段階では、印字面が見えるタイプライターは数多く実用化されていて、「Remington Standard Typewriter No.7」は、すでに時代遅れになりつつあったと思われます。