今週のことわざ

(おのれ)の欲(ほっ)せざる所(ところ)は人(ひと)に施(ほどこ)すこと勿(なか)

2007年12月3日

出典

論語(ろんご)・顔淵(がんえん)―論語(ろんご)・衛霊公(えいれいこう)

意味

他人からしてもらいたくないことは、自分も他人にしない。自分がいやなことは、他人もいやなのだからしないことである。

原文

〈論語(ろんご)・顔淵(がんえん)
仲弓問仁。子曰、出門如大賓、使民如大祭。己所欲、勿於人。在邦無怨、在家無怨。
〔仲弓(ちゅうきゅう)仁を問う。子(し)(いわ)く、門を出(い)でては大賓(たいひん)を見るが如(ごと)くし、民を使うには大祭に承(つか)えるが如くす。己(おのれ)の欲(ほっ)せざる所は人に施すこと勿(なか)れ。邦(くに)に在りては怨(うら)み無く、家に在りても怨み無し、と。〕

訳文

(孔子(こうし)の弟子の)仲弓(ちゅうきゅう)が、仁とはどういうことかと質問した。孔子は次のように答えられた。「家の外で他人に逢(あ)うときは、その人を自分にとって何よりも大事なお客のように扱わなければならない。人民を公役に使うときには、祭りを執り行うときのように慎み深くしなければならない。自分が他人からしてもらいたくないことは、他人にもしてはならない。そうすれば国の中枢にいても人に恨まれることはなく、家庭にあっても人に恨まれることはない。」

原文

〈論語(ろんご)・衛霊公(えいれいこう)
子曰問曰、有一言而可以終身行一レ之者乎。子曰、其恕乎。己所欲、勿於人
〔子貢(しこう)問いて曰(いわ)く、一言(いちげん)にして以(もっ)て終身これを行うべき者有りや、と。子(し)曰く、それ恕(じょ)か。己(おのれ)の欲(ほっ)せざる所は人に施すこと勿(なか)れ、と。〕

訳文

子貢(しこう)が孔子(こうし)に質問した。「一言で一生実行していく徳目というものがあるでしょうか。」孔子が答えられた。「それは恕(じょ)(=思いやり)ということだ。自分のしてもらいたくないことは、人にもしないことだ。」

解説

同じ句が『論語(ろんご)』の中に二か所出てくる。ともに仁というものの本質についても問答である。仲弓(ちゅうきゅう)に対する答えも、子貢(しこう)に対する答えも、仁とは人に対する敬い、慎み深さ、思いやりといううことである点で共通している。対人関係は、他人への共感、思いやりが基本であるという意味。

筆者プロフィール

三省堂辞書編集部