出典
詩経(しきょう)・邶風(はいふう)・撃鼓(げきこ)―詩経(しきょう)・王風(おうふう)・大車(たいしゃ)
意味
夫婦むつまじいことをいう。また、その契りの意味。「偕老(かいろう)」は、ともに老いること、「同穴」は、墓を同じくすること。夫婦はいつまでも一緒に仲よく生き、死んだら同じ墓に葬られるのが理想的なあり方だという意味。「偕老」も「同穴」も『詩経(しきょう)』を出典とするが、四字句で出てくるわけではない。
原文
〈邶風(はいふう)〉
死生契闊、与レ子成レ説。執二子之手一、与レ子偕老。
〔死生契闊(しせいけつかつ)、子(なんじ)と説(ちかい)を成す。子の手を執りて、子と偕(とも)に老いん、と。〕
訳文
(出征した兵士が故郷の妻を慕い嘆いて言う。)(家にいる妻よ、)死ぬも生きるもどんな苦しい目に遭おうとも、おまえとわたしの間には取り交わした誓いがある。おまえの手をとって、おまえと一緒に共白髪(ともしらが)まで生きようという誓いが。
原文
〈王風〉
穀則異レ室、死則同レ穴。謂二予不一レ信、有レ如二皦日一。
〔穀(い)きては則(すなわ)ち室(しつ)を異にするも、死しては則ち穴(けつ)を同じうせん。予(われ)を信(まこと)あらずと謂(い)うか、皦(しろ)き日の如(ごと)き有り。〕
訳文
(世間の掟(おきて)に背いて結婚しようとする男女が、役人のとがめを受けるのではないかと恐れ、女が男に誓って言う。)生きているときは同じ部屋に住んでいるわけではないけれど、死んだら同じお墓に入りましょう。わたしがうそをついているというの。わたしの誓いはあの白く輝く太陽のように偽りはないの。
解説
「偕老(かいろう)」は『詩経(しきょう)』では他に鄘風(ようふう)・君子偕老(くんしかいろう)と、衛風(えいふう)・氓(ぼう)(=行商人)に出てくる。しかし鄘風の場合は、夫を裏切った貴婦人を非難する詩で、「共白髪(ともしらが)まで」と言いながら夫をだましているという意味に用いている。また衛風・氓では、行商人が村の娘をたぶらかして妻にするが、すぐに飽きて捨ててしまう。女が自らを嘆いて「あなたと、共白髪までと思っていたのに」と恨む詩である。例としてあげた邶風(はいふう)・撃鼓(げきこ)も戦争のため生き別れを強いられた夫婦の嘆きの詩であるし、王風(おうふう)・大車(たいしゃ)も結婚を妨げられた女の悲しみの詩である。現存する出典『詩経』では、「夫婦が添い遂げられる苦しさ」を歌った詩ばかりであり、現在のようにおめでたい言葉として使われている例はない。