お宅の玄関は開き戸でしょうか。もしそうなら、そこに、用心のための鎖がついているはずです。それをどう呼んでいますか。私は、特に意識することもなく、漠然と「チェーン」と言っていましたが、『三省堂国語辞典』では、第二版以来「ドアチェーン」の形で載せています。新聞などでも「ドアチェーン」は使われています。
ほかに、これを「チェーンロック」と言うことはないでしょうか。私自身は、そう言うことがあるような気がします。活字になった文章でも、次のように出てきます。
〈〔ドアにノックがあったので〕二種類のドアロックとチェーンロックを解く。〉(斎藤純「ル・ジタン」『推理小説代表作選集 1994年版』講談社 p.81)
この「チェーンロック」は『三国』の旧版になく、また、調べた範囲では、他の辞書にも見当たりません。最新の第六版にぜひ載せたいと思いました。でも、しばし待て、です。「チェーンロック(名)ドアチェーン。」と説明して、本当にいいのかどうか。
じつは、ウェブサイトで検索すると、「チェーンロック」がドアチェーンの意味で使われている例は、あまり多くありません。むしろ、バイクや自転車に巻きつける鎖式の錠を指す場合が目につきます。こうなると、厳密な定義を確認する必要が出てきます。
文献では、チェーンロックについてくわしく説明する記述は見つかりませんでした。思いあまって、関係方面に電話で問い合わせてみました。日本ロック工業会、全国防犯協会連合会、それに、業界大手の会社などに伺ったところ、ご応対くださった方々は、ご自分の語感なども交えて、懇切に教えてくださいました。
それによると、「チェーンロック」は、ドアではなく、自転車や自動販売機などの施錠に使うものを指します。かつては「鎖錠(くさりじょう)」とも言ったそうです。
ドアに掛ける鎖は、やはり「ドアチェーン」と言います。最近は、鎖ではなく掛け金式のものが多くなっていますが、これは「ドアガード」などの名で呼ぶそうです。
以上を踏まえて、まず、新規項目「チェーンロック」の語釈を次のように記しました。
〈自転車・自動販売(ハンバイ)機などにつける、くさりのついた錠(ジョウ)。くさり錠。〉
また、「ドアチェーン」の項目にも、〈〔かけがね式は「ドア ガード」と言う〕〉と、あまり知られていない「お得情報」をつけ加えておきました。