今回から3回にわたって「数量表現別」を取り上げていきます。「数量表現」というのは、もちろん「数」と「量」に関する表現ですが、ただ、それだけではなく、「数」という概念として取り扱う「表現」と、「量」という概念として取り扱う「表現」とがあり、これが、英語と日本語とでは、厳密さという意味で、全く違っています。そこに大きな難しさ、厄介さがあります。
「トミイ方式」では、「数量表現」を次の3つに「中分類」しています。
1 数量表現の基本パターン
2 数量表現のスタイル
3 各物理量の表現
1 数量表現の基本パターン
これを今回取り上げます。数量表現を構成する各要素、すなわち、数値、単位、物理量、名詞の4つをどのように組み合わせて「文」や「句」を構成するかについて記述している分類です。
2 数量表現のスタイル
これは次回(第35回)で述べるもので、基数詞、序数詞、単位、分数、小数、数量表現周りの語句、以上・以下、超え・未満などにつき、和訳する時ではなく、どちらかというと英訳する際の重要なルールなどについて説明している分類です。
また、ここでは、「数量表現」を単に分類して解説するだけではなく、上述した、「数」および「量」という概念として取り扱う「表現」の違いにもスポットライトを当てて分類しています。
3 各物理量の表現
これは第36回で扱います。温度、湿度、速度、圧力、電圧、電流、価格、高さ、幅、長さなど、重要な物理量を79個取り上げ、そのそれぞれを、1 数量表現の基本パターンに基づき、分類しているものです。
1 数量表現の基本パターン
「トミイ」方式では、これをさらに次の4つに「小分類」しています。ついでに、それぞれの「小分類」に対して「細分類」まで表示してあります。「小分類」は(a)、(b)、(c)、で「細分類」は(i)、(ii)、(iii)、で表示してあります。
(a) 何々は何々である
(i) ……は×□である
(ii) _____の……は×□である
(iii) _____は……が×□である
(b) 何々の(が)何々
(i) ……が×□の_____
(ii) ×□の……
(iii) ×□の_____
(iv) ×□(単独の形)
(c) 何々は何々もある[何々しかない]
(i) ……は×□もある[何々しかない]
(ii) _____の……は×□もある[×□しかない]
(iii) _____は……が×□もある[×□しかない]
(d) 何々もある[何々しかない]何々
(i) ……が×□もある[×□しかない]_____
(ii) ×□もある[×□しかない]……
(iii) ×□もある[×□しかない]_____
(iv) (最大[少、小、高、低、など])×□も[×□しか]
ここで、×は数値を、□は単位を、……は物理量を、_____は名詞をそれぞれ表わしています。
(a)と(b)は通常の数量表現を表わしており、(c)と(d)は、驚き、嬉しさ、失望、困惑など、感情を表わす数量表現を表わしています。そして、(a)と(c)は、それぞれ数量表現全体が完全な文になっており、(b)と(d)は数量表現が文の中の一部となっています。
それぞれの「細分類」に対する対応英語は下記の通りです。対応英語ですからこれを「分類」とは言いませんが、対応英語が2つ以上あるものもありますので、これを便宜上、「細々分類」と呼び、(1)、(2)、(3)、で表示しています。
(a) 何々は何々である
(i) ……は×□である
(1) …… is ×□.
(ii) _____の……は×□である
(1) …… of ____ is ×□.
(2) ____ …… is ×□.
(3) ____ has a …… of ×□.
(iii) _____は……が×□である
(1) _____ is ×□ in …….
(2) ____ is ×□ ===.
注:…… は物理量ですので名詞ですが、時には、その物理量を形容詞で表現することもあります。=== がその形容詞形です。例えば、lengthに対するlong,heightに対するhigh,depthに対するdeepなどがそれです。
(b) 何々の[が]何々
(i) ……が×□の____
(1) 数量語句 + 名詞
① ×□ …… + ____
② ×□ === + ____
③ ×□ + ____
(2) 名詞 + 数量語句
① ____ + ×□ in ……
② ____ + ×□ ===
(3) 名詞+他の語句+数量語句
① ____ + of + ×□ in …… [===]
② ____ + having + a …… of ×□
③ ____ + 範囲語 + ×□ in …… [===]
ここでは、「極細分類」まで使っています。
(ii) ×□の……
(1) 一点の物理量
① a …… of ×□
② a ×□……
(2) 範囲のある物理量
① ……s (of) up to ×□
② ……s (of) down to ×□
③ ……s below [under] ×□
④ ……s over [above] ×□
⑤ ……s 範囲語 ×□
⑥ ……s of ×□ or [and] 形容詞の比較級
(3) 範囲ある物理量の一点
① a …… of from ×□ to y□
② a …… of ×□ or 形容詞の比較級
③ a …… (of) up to [down to] ×□
④ a …… of more [less] (または形容詞の比較級) than ×□
(c) 何々は何々もある[何々しかない]
(i) ……は×□もある[何々しかない]
(1) …… is as ~ as ×□.
(ii) ____ の……は×□もある[×□しかない]
(1) …… of ____ is as ~ as ×□.
(2) ____ …… is as ~ as ×□.
(3) ____ has a …… of as ~ as ×□.
(iii) ____ は……が×□もある[×□しかない]
(1) ____ is as ~ as ×□ in …….
(2) ____ is as ~ as ×□ ===.
(3) ____ is as ~ as ×□.
(d) 何々もある[何々しかない]何々
(i) ……が×□もある[×□しかない]____
(1) 名詞+数量語句
① ____ + as ~ as ×□ in ……
② ____ + as ~ as ×□ ===
③ ____ + as ~ as ×□
(2) 名詞+他の語句+数量語句
① _____ + of + as ~ as ×□
(ii) ×□もある[×□しかない]……
(1) 物理量 + 数量語句
① …… + as ~ as ×□
(2) 物理量+他の語句+数量語句
①…… + of + as ~ as ×□
(iii) ×□もある[×□しかない]____
(1) 数量語句が物質名詞を修飾
① as ~ as ×□ + of + _____
(2) 数量語句が普通名詞(可算)を修飾
① as ~ as ×□ + _____
(iv) (最大[少、小、高、低、など])×□も[×□しか]
(1) 動詞の目的語としての用法
① 動詞 + as ~ as ×□
(2) 前置詞の目的語としての用法
① 前置詞 + as ~ as ×□
基本パターンは以上です。数量表現は、文であっても句であっても、ほとんど上に述べて来たパターンの中に納まるのではないかと思います。
最後に、基本パターンの中で重要なパターンを3つほど、例を挙げて説明します。
その1 have動詞を使った表現
「(a) 何々は何々である」の中で、「(ii) _____の……は×□である」の中に英語の表現方法には次の3つがあると説明しました。
(1) …… of ____ is ×□.
(2) ____ …… is ×□.
(3) ____ has a …… of ×□.
例えば
水の沸騰点は100℃である.
という日本語を英語で書く場合、多くの日本字は、「(1) …… of ____ is ×□.」を使って
The boiling point of water is 100°C. …………①
と書きます。もちろん、これで間違っているわけではありませんが、ネイティブは、よく「(3) ____ has a …… of ×□.」を使って
Water has a boiling point of 100°C. …………③
と書きます。③ のように発想できるようにしておくと、便利な場合が非常に多いです。
その2 1点の物理量の表現
例えば
100℃の温度
という場合、「(b) 何々の(が)何々」、その中の「(ii) ×□の……」、さらにその中の「(1) 一点の物理量」の中にある「① a …… of ×□」を使って
a temperature of 100°C
と書きます。これは基本中の基本で、必ず正確に覚えておかなければならない表現です。すなわち
不定冠詞 + 物理量(単数形) + of + 数値 + 単位
という5つの要素を、正しい語順で正しく書かなければなりません。
その3 範囲のある物理量の表現
例えば
100℃までの温度
という場合、「(b) 何々の(が)何々」、その中の「(ii) ×□の……」、さらにその中の「(2) 範囲のある物理量」の中にある「⑤ ……s 範囲語 ×□」を使って
temperatures up to 100°C
と書きます。これも基本中の基本で、必ず正確に覚えておかなければならない表現です。すなわち
無冠詞 + 物理量(複数形) + 範囲語 + 数値 + 単位
です。
次回は、数量表現のスタイルをお届けします。