「Remington Standard Typewriter No.10」は、レミントン・タイプライター社が1908年12月に発売したフロントストライク式タイプライターです。「Sholes & Glidden Type-Writer」以来、ずっとアップストライク式タイプライターの製造をおこなってきたレミントンは、この「Remington Standard Typewriter No.10」でフロントストライク式に挑戦しました。
「Remington Standard Typewriter No.10」の特徴は、プラテンの手前に扇状に配置された42本の活字棒(type arm)で、その点ではライバルの「Underwood Standard Typewriter No.5」に酷似しています。各キーを押すと、対応する活字棒が立ち上がって、プラテンの前面に置かれた紙の上にインクリボンごと叩きつけられ、紙の前面に印字がおこなわれます。キーを離すと、活字棒とインクリボンは元の位置に戻り、紙の前面に印字された文字が、オペレータから直接見えるようになります。活字棒の先には、活字が2つずつ付いていて、通常の状態では小文字が印字されますが、「SHIFT KEY」(キーボード最下段の左右端)を押すと、プラテンが持ち上がって、大文字が印字されるようになります。また、左の「SHIFT KEY」のすぐ上には「SHIFT LOCK」キーがあって、「SHIFT KEY」を押しっぱなしにできます。
上の広告に見える「Remington Standard Typewriter No.10」のキーボードは、いわゆるQWERTY配列です。キーボードの最上段は、大文字側に"#$%_&'()¾が、小文字側に234567890-が並んでおり、右端には「BACK SPACER」キーがあります。次の段は、大文字側にQWERTYUIOP¼が、小文字側にqwertyuiop½が並んでおり、その次の段は、左端に「SHIFT LOCK」キーがあって、大文字側にASDFGHJKL:@が、小文字側にasdfghjkl;¢が並んでいます。最下段は、両端に「SHIFT KEY」があって、大文字側にZXCVBNM,.?が、小文字側にzxcvbnm,./が並んでいます。数字の「1」は、小文字の「l」で代用することが想定されていたようです。
キーボードの奥にはタブキーが5つ並んでいて、6列の表を作るのが便利なようになっています。タブキーの左上にある銀色のツマミは、インクリボンの赤と黒を切り替えるためのもので、これにより「Remington Standard Typewriter No.10」は、赤・黒の2色印字が可能となっています。2色印字は、ライバルの「Underwood Standard Typewriter No.5」には(上の広告の時点では)実装されておらず、「Remington Standard Typewriter No.10」を優位に立たせる工夫だったようです。