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地域語の経済と社会 第33回

2009年 1月 31日 土曜日 筆者: 日高 貢一郎

地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第33回 「方言かるた」あれこれ

 かつて、子供たちの冬場の遊びといえば、外では凧揚げやコマ回し、羽根突きやマリつき、室内では剣玉、お手玉、綾とり、福笑い、すごろくなどが代表的なものだったでしょうか。しかし近年は、テレビゲームや電子ゲームなどが登場し、音声付き、映像付きで、画面が多様に変化して子供たちの興味を強く引き付け、それに主役の座を奪われてしまったようで、かつての伝統的な子供の遊びは影が薄くなったように思われます。

 ところが、そんな中にあって、最近、「かるた」に注目が集まっているとのこと。しかも全国各地で、地元の素材や話題を織り込んだ「郷土かるた」「ふるさとかるた」と呼ばれるものが続々と作られているといいます。

 「日本郷土かるた研究会」(会長・山口幸男、群馬大学教育学部教授〔社会科教育〕)のホームページによると、全国で500もの「郷土かるた」があると書かれていますが、その後の調査によると、わかっただけでも何と1500にも上っているということです。

【写真1 全国各地の「方言かるた」のいろいろ】
【写真1 全国各地の「方言かるた」のいろいろ】
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 その中には、地元の「方言」を活かした「方言かるた」もあります。【写真1】

 いま私の手元にあるものだけでも、北から南に…『北海道方言かるた』(北海道)、『津軽弁かるた』(青森県)、『仙台弁かるた』(宮城県)、『とちぎご当地方言かるた』(栃木県)、『心のふるさと新潟弁かるた』(新潟県)、『甲州弁かるた』(山梨県)、『方言歌留多 名古屋言葉合せ』(愛知県)、『石川さんの金沢弁かるた』(石川県)、『京ことばかるた』(京都府)、『播州弁かるた』(兵庫県)、『土佐弁かるた』(1)(2)(高知県)、『博多弁かるた』(福岡県)、『八女市方言かるた』(福岡県)、『諸県方言かるた』(宮崎県)、などがあります。

 インターネットで「方言かるた」というキーワードで検索すると、『おらほの言葉盛岡弁カルタ』(岩手県)、『稲城方言カルタ』(東京都)、『浅羽の方言かるた』(静岡県)、『備後弁かるた』(岡山県)、『出雲弁だんだんかるた』(島根県)、『熊本弁かるた』(熊本県)、『与論の方言かるた』(鹿児島県)、等々、さらにたくさんの「方言かるた」がヒットし、全国各地で作られていることがわかります。

 祖父母・両親・子供の3世代でいっしょにかるた取りをすると、札の中にわからないことばがあった場合には、子供が両親やおじいちゃん・おばあちゃんに「これ、どういう意味?」と聞くことも可能で、いわば文字どおり“遊びながら”方言や地元の事柄について学ぶこともできるわけで、おのずと異世代間の交流も進み、一石何鳥もの効果が期待できるというわけです。

 近年、その教育的な効果が、再認識・再評価されているようです。

【写真2 『石川さんの金沢弁かるた』(2008.12発売)】
【写真2 『石川さんの金沢弁かるた』
(2008.12発売)】
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 最近では、読み札を土地のお年寄りや地元出身のタレント、アナウンサーなどが読んでCDにしたものも出てきました。CDプレーヤーでランダム再生にすれば、少人数のときにも楽しく遊べます。少子化の時代ですから、かるたを取ろうにも、もし子供たちが3人しかいなかった場合、1人が読み手に回ると、取れるのは2人だけになってしまいます。が、CDが読みあげてくれれば3人全員で楽しく遊べます。なるほど、時代に合った方式といえそうです。【写真2】

 ただ、先の山口幸男教授によると、「郷土かるた」は作るところまでは多くの地域が努力するが、その後の普及、活用、定着が最も大きな課題になっているとのことです。

 その点、こういったかるたの元祖ともいうべき『上毛かるた』(群馬県、昭和22年)は、地区大会、郡市大会、そして県大会と、非常にしっかりしたシステムができ上がっており、さすがは長い伝統を誇るだけに蓄積と重みがあります。

【参考】
「日本郷土かるた研究会」 http://www14.plala.or.jp/hpmsmiki/ のホームページには「かるたの歴史」や、「都道府県別の郷土かるたランキング」その他の情報が掲載されています。

「郷土かるた館」http://homepage2.nifty.com/taki-forest/karuta/karuta.html のホームページは、全国の都道府県別の「郷土かるた」が検索できるようになっています。

また、CD付きかるたを多数制作している会社のホームページ「オシャベリカルタ」http://www.かるた.jp/about_oshaberikaruta.php には、各地のCD付きの方言かるたが紹介されています。

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【筆者プロフィール】

言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
 井上史雄大橋敦夫田中宣廣日高貢一郎山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)

日高貢一郎(ひだか・こういちろう)
 大分大学 教育福祉科学部 教授(国語学・方言学) 宮崎県出身。これまであまり他の研究者が取り上げなかったような分野やテーマを開拓したいと、“すき間産業のフロンティア”をめざす。「マスコミにおける方言の実態」(1986)、「宮崎県における方言グッズ」(1991)、「「~されてください」考」(1996)、「方言の有効活用」(1996)、「医療・福祉と方言学」(2002)、「方言によるネーミング」(2005)、「福祉社会と方言の役割」(2007)など。

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【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載の始まりです。

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2009年 1月 31日