地域語の経済と社会 第51回
2009年 6月 6日 土曜日 筆者: 田中 宣廣地域語の経済と社会―方言みやげ・グッズとその周辺―
第51回「日用品の方言グッズ」
この連載も前回が50回,今回から新たな50回となります。できるだけ回を重ねることができるよう,精一杯頑張りますので,みなさん,よろしくお願いします。
さて,今回の話題は,「みやげ」でない「方言グッズ」です。
この連載の題名(副題)のように,私たちは「みやげ」と「グッズ」の二つをひとまとめにして,「方言みやげ・グッズ」と呼んでいます(第1回また第31回で説明)。その理由の一つに,「みやげ」と「グッズ」の区別が付けにくい,ことがあります。

【写真1】「とうほくのことば」
ティッシュペーパー側面
(クリックで全体を表示)

【写真2】「とうほくのことば」
ティッシュペーパー底
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【写真3】「とうほくのことば」
トイレットペーパー
(クリックで全体を表示)
そういうところ,私の専属研究助手~世間では「妻」と呼ばれます~が,「みやげ」でない「方言グッズ」を見つけてきました。
「nacre」ブランドの,「とうほくのことば」と題されたティッシュペーパーとトイレットペーパーです。発売元は三菱製紙(家庭紙事業室,所在地:岩手県北上市)です。
ティッシュペーパーは,『箱』の「側面」と「底」に東北地方の方言がたくさん載っています。このティッシュペーパーは,5箱1パックで,「側面」は5箱の長辺側の2面つまり10面に,各面3例ずつ計30例の方言が載せてあります【写真1】。
また,「底」には,5箱共通で,東北地方6県各々の代表的な方言が,各県5例ずつ計30例,共通語の意味とともに一覧になっています【写真2】。
トイレットペーパーは,12巻1パックで,そのパックのビニール外袋の2面に,1面6例ずつ計12例の方言が示してあります【写真3】。
さらに,各県の象徴のイラストもあわせて載せられています。青森:リンゴ・ホタテ,岩手:南部鉄瓶・わんこそば,秋田:なまはげ・きりたんぽ,などです。
これらは日用の消耗品ですし,また,上で述べたとおり,かなり『かさ』の張る商品ですから,製造者に,観光地でのおみやげにする意図はなく,地元の人に『ふるきよきふるさと』を思い出してもらいたい目的で製作されたものだというのはすぐに分かります。他社製品との差別化,という販売戦略のなかで,方言が採用されたのですね。
「方言グッズ」には,こういう日用品もあるわけです。
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【筆者プロフィール】
言語経済学研究会 The Society for Econolinguistics
井上史雄,大橋敦夫,田中宣廣,日高貢一郎,山下暁美(五十音順)の5名。日本各地また世界各国における言語の商業的利用や拡張活用について調査分析し,言語経済学の構築と理論発展を進めている。
(言語経済学や当研究会については,このシリーズの第1回後半部をご参照ください)
田中宣廣(たなか・のぶひろ)
岩手県立大学 宮古短期大学部 准教授。博士(文学)。日本語の,アクセント構造の研究を中心に,自然言語の実態を捉え,その構造や使用者の意識,また,諸方言の形成過程について考察している。東京都立大学大学院人文科学研究科修士課程修了。東北大学大学院文学研究科博士課程修了。著書『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』(おうふう),『近代日本方言資料[郡誌編]』全8巻(共編著,港の人)など。2006年,『付属語アクセントからみた日本語アクセントの構造』により,第34回金田一京助博士記念賞受賞。
【編集部から】
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載。
この連載への質問、また「ここでこんな方言みやげ・グッズを見た」などの情報は、問い合わせフォーム( http://dictionary.sanseido-publ.co.jp/support/question.html )から、「地域語の経済と社会」への質問・情報である旨を記してご投稿ください。
2009年 6月 6日







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