京都で、包み紙に方言が書いてあるので、お菓子を買いました。開けてみたらミニカステラまんじゅうで、1個1個に焼印で方言が記してあります。真空包装で字がつぶれて読み取りにくいですが、「おいでやす」「おへん」「そうどすえ」「ごめんやす」で、あいさつことばでした。
冷凍庫に入れて永久保存しようかと思いましたが、スペースがありません。包み紙に書いてあることばと同じなので、記録写真を撮って、食べてしまいました。
方言みやげの大部分は保存できるので、誰かが手元にとどめてくれるでしょう。しかし保存できないお菓子の実物は困ります。飾っておくわけには行かないし、冷凍庫に入れて永久保存しても、取り出して眺めるたびに解凍が進むのでは厄介です。
写真に撮るのが一番で、このカラー写真も貴重な記録になります。それに、インターネットで公開すれば、バーチャル方言博物館ができます。
(この続きの大阪の話は、5週間後、第57回に続きます。)
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そういえば、この稿の筆者の社会言語学・計量方言学に関する英語論文が、三省堂のホームページに載りました。インターネットでバーチャルな本が出版されたようなものです。もっともこの日本語記事を読んでいる人は、英語論文に興味がないでしょうから、世の中うまく行かないものです。
English Papers on Sociolinguistics and Computational Dialectology
――Language Market, New Dialect and Dialect Image――
(社会言語学・計量方言学英語論文――言語市場・新方言・方言イメージ――)
//dictionary.sanseido-publ.co.jp/affil/person/inoue_fumio/index_eng.html
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。