タイプライターに魅せられた男たち・補遺

広告の中のタイプライター(21):Monarch No.2

筆者:
2017年12月7日
『International Studio』1910年7月号

『International Studio』1910年7月号

「Monarch No.2」は、モナーク・タイプライター社が1905年頃に発売したタイプライターです。フロントストライク式タイプライターを開発すべく、ユニオン・タイプライター社の配下で創立されたモナーク・タイプライター社でしたが、売上においては非常に苦戦しており、この広告の時点では、製造部門をレミントン・タイプライター社と統合せざるを得なくなっていたようです。

「Monarch No.2」は、42キーのフロントストライク式タイプライターで、円弧状に配置された42本の活字棒(type arm)が、ライバルの「Underwood Standard Typewriter No.5」に酷似しています。各キーを押すと、対応する活字棒が立ち上がって、プラテンの前面に置かれた紙の上にインクリボンごと叩きつけられ、紙の前面に印字がおこなわれます。通常の印字は小文字ですが、キーボード最下段の左右端にある「SHIFT KEY」を押した状態では、タイプ・バスケット全体が持ち上がって、大文字が印字されるようになります。また、キーボード最上段の左端には「SHIFT LOCK」キーがあって、タイプ・バスケットを持ち上げたままにすることができます。

「Monarch No.2」のキー配列は、ユニオン・タイプライター社の標準であるQWERTY配列です。キーボードの最上段は、234567890-が小文字側に、“#$%_&’()¾が大文字側に並んでいます。次の段は、qwertyuiop½が小文字側に、QWERTYUIOP¼が大文字側に並んでいます。その次の段は、asdfghjkl;¢が小文字側に、ASDFGHJKL:@が大文字側に並んでいます。最下段は、zxcvbnm,./が小文字側に、ZXCVBNM,.?が大文字側に並んでいます。数字の「1」は、小文字の「l」で代用することが想定されていたようです。最上段の右端には「BACK SPACE」キーがあり、そのさらに右上には「TAB KEY」と「MARGIN RELEASE」キーが配置されていました。

「Monarch No.2」は、赤黒2色のインクリボンに加え、タビュレーション機構や、タイプ・バスケットの上下によるシフト機構など、当時としては画期的なフロントストライク式タイプライターでした。しかしながら、先行する「Underwood Standard Typewriter No.5」のシェアを奪うには至らず、かなり苦戦を強いられていたようです。

筆者プロフィール

安岡 孝一 ( やすおか・こういち)

京都大学人文科学研究所附属東アジア人文情報学研究センター教授。京都大学博士(工学)。文字コード研究のかたわら、電信技術や文字処理技術の歴史に興味を持ち、世界各地の図書館や博物館を渡り歩いて調査を続けている。著書に『新しい常用漢字と人名用漢字』(三省堂)『キーボード配列QWERTYの謎』(NTT出版)『文字符号の歴史―欧米と日本編―』(共立出版)などがある。

//srad.jp/~yasuoka/journalで、断続的に「日記」を更新中。