この連載では,これまで役所による方言の拡張活用例を多数報告してきました(第13回,第101回,他)。今回は,公務員募集のポスターやチラシでの方言メッセージです。
役所のポスターは,正規の公文書でなくても,公的な性格があります。そこに方言を意識的に使用するのは,近年の傾向です。今回は,3府県の例を紹介します。
はじめは,平成23年の大阪府警察官募集ポスターです【写真1】。「ごめんですんだら 警察いらんわ!!」のフレーズは,これを声に出すとき,自然と大阪方言のアクセントになってしまうほど,ピタリとはまっています。大阪府警察では,平成16年度募集に「ほんまはな,おかあちゃんも,おとうちゃんも,ぼくが守りたいねん。」,本年度に「何でも聞いてや」と,合計3度大阪方言を活用しています。なお,大阪府警察の警察官採用のウェブサイト(https://www.police.pref.osaka.jp/06saiyo/keikan/annai/index.html)には,「警察官採用ポスターの歴史」もあり,画像は小さいものの,昭和40(1965)年からのポスターが閲覧できます。
次に,平成23年の宮城県と仙台市の教員募集のパンフレットです【写真2】。「これが宮城だっちゃ!」の方言メッセージが,伊達政宗の絵とともにカット的に使われています。
おしまいに,今年の秋田県警察の警察官募集です【写真3】。ポスターのデザインでも優れた図案です。最初に目を引かせるところに,大きく秋田の方言で,秋田を象徴するフレーズを出しました。「悪い奴はいねが!?」で,なまはげの「悪ー子(わりーご)はいねーがー」のセリフが元ですね。しかも,「見切れ」の技法により,メッセージの両端を切り(スキャンのミスではありません),メッセージをより大きく感じさせています。空いたスペースになまはげの白バイ警官をカットに入れています。方言の拡張活用では,前の2例は,地域色を出すための脇役ですが,今年の秋田県警察は,「悪い奴はいねが」が主役です。今年の採用案内は,ウェブサイト//www.police.pref.akita.jp/kenkei/saiyo/pdf/25pamphlet.pdfでみることができます。
皆さんお住まいのところでも,公務員募集に方言の活用例があるでしょうか? 学校内や街の掲示板を気をつけてみてみましょう。