第250回・第263回につづいて、埼玉県内で見つけた方言グッズのご紹介を──。
まずは、その名も「方言銘菓 そうなん娘」(深谷市・西倉西間堂)。
パッケージの裏の説明には、
「そうなん」とは埼玉県北部・群馬県東部地方で使われる方言で「そうですか」という意味です。おもに「相槌(あいづち)」として使われるこの言葉は、相手のはなしに調子を合わせる暖かみのある言葉としてこの地方の人たちに使われています。
と、あります。
つづいて、秩父郡でみつけた味噌2点、その名は「おあがんな」「あちゃむし」。
それぞれのパッケージには、
「うまい御御御付(おみおつけ)をたっぷりおあがんな」
「うまい御御御付(おみおつけ)ならあちゃむし この味噌だんべ」(編集部注=「おあがんな」「あちゃむし」「だんべ」に圏点)
のコピーも添えられています。
命名の由来等を伺ってみました。
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●たくさんの種類の商品を販売なさっている中で、この2点に方言で名付けをされたのは、なぜですか?
秩父地方の名産である大豆を使用しているので、秩父らしさを出すために、当地の代表的民謡の「秩父音頭」にヒントを得ました。歌詞の中に、「ちいろばよつて おあがんな」[=火のそばへ あおがりください]があり、囃し言葉は、有名な「あちゃむしだんべ」です。
●お客様の反応はいかがですか?
発売から15年ぐらいになりますが、大豆等の原材料の生産地を秩父と限定しているので、埼玉県からも「地産地消食品」の認定をいただきました。製造量と販売量のバランスの良い商品です。
(新井武平商店・新井藤治氏談)
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以前の例に加えて分析してみると、秩父は、「秩父音頭」を生かして、用例が豊富になっていることがわかります。本連載をまとめた『魅せる方言』(三省堂 2013)でも示している「方言でおもてなし」「方言みやげ・グッズ」「方言メッセージ」「方言ネーミング」などの各例において、「べぇ」の使用が中心になっています。
今後は、埼玉県東部での発見にチャレンジしたいと思っています。