新修百科辞典
昭和9年(1934)3月20日刊行
三省堂百科辞書編輯部(代表者斎藤精輔)/本文2132頁/菊判(縦222mm)
本書は、『図解現代百科辞典』(昭和6~8年)刊行の1年後に出版された、1冊ものの百科事典である。
序文によると、「繁に流れず簡に失せず、いかなる場合も当座即刻に、手に取るやうに世人の諮問に応ずる手頃の辞典」で、しかも価格が安く何人にも得やすいものであることを意図していた。
『図解現代百科辞典』を基に作られているため、内容の多くを流用し、時には項目を増やしたり、内容を書き換え、写真や図を新たなものに変更したりもしている。「猫」「犬」の項目は、解説文に変化なく、猫は写真がなくなり、犬の写真は21点から8点に減った。
見出しは、『図解現代百科辞典』と同様に発音式の仮名遣いで、歴史的仮名遣いを小さく添え、長音符号「ー」は読まない。外来語のみをカタカナとした点が異なっている。
本文の途中には、アート紙による写真やカラー彩色図版が69点挟み込まれている。これは『日本百科大辞典』(明治41年~大正8年)と同じ方式である。
三省堂は、百科事典においても着々と地歩を固めつつあったが、同年4月10日に博文館から『新修百科大辞典』が刊行された。この『新修百科大辞典』は刊行日も近く、書名も大きさも似ていたので紛らわしかった。
本書は定価10円で、5月15日まで特価7円と内容見本にある。しかし、『新修百科大辞典』(本文1494頁)が定価8円50銭だったせいか、その後も本の奥付に特価7円と載っていた。ページ数が多いだけではなく、天金・背革の装丁だっただけに、不利になったかもしれない。昭和13年の61版からは増補版として41頁分の補遺が追加され、天金・背革ではなくなり、特価8円になった。
なお、博文館は昭和10年2月に新村出編『辞苑』(定価4円50銭、特価3円20銭)を刊行した。そのため、昭和9年3月刊行の『広辞林』新訂版も、定価4円80銭、特価3円90銭だったのを特価2円90銭にすることで対抗したのだった。
●最終項目
わんりょくそうば(腕力相場) 人為的につくられた相場。有力筋が単に市場での売買だけで生ぜしめた相場で、売叩き、買占めなどは是。
●「猫」の項
●「犬」の項目