日本語社会 のぞきキャラくり

補遺第44回 重大なお知らせ

筆者:
2013年9月29日

「人物の挙動が,その人物のキャラクタにふさわしくないことばで表現されることも,文脈によっては例外的にあり得る」として,これまでに例外的な文脈を2つ挙げた。さっそく第3の例外的文脈の紹介に入りたいところだが,実は皆様に重大なお知らせがあるのである。

「日本人の『ちょっと面白い話』は外国語に訳せるか?―日本語・翻訳・会話・面白さ―」ポスター
(画像をクリックするとPDFを表示します)

この「のぞきキャラくり補遺」の第26回でも「わたしのちょっと面白い話」に触れることがあったが,これに関する研究集会「日本人の『ちょっと面白い話』は外国語に訳せるか?―日本語・翻訳・会話・面白さ―」が10月11日(金)夕刻に大阪で開催されるので,この場を借りてご案内させていただく。(イラストは、国立民族博物館の金田純平氏に作ってもらったポスターである。)

「わたしのちょっと面白い話」とは何か? これは,一般の日本語母語話者がそれぞれ数分の「ちょっと面白い話」を語った様子(音声・動画)に字幕を付け,ネット上で公開しているものである。誰が? 私がである。

 2010年度に収録した「ちょっと面白い話」は次のページで視聴できる。
  //www.speech-data.jp/kaken/chotto1.html

 2011年度に収録した「ちょっと面白い話」は次のページで視聴できる。
  //www.speech-data.jp/chotto/2011/

 2012年度に収録した「ちょっと面白い話」は次のページで視聴できる。
  //www.speech-data.jp/chotto/2012/

というわけで,これまでに100話以上の「わたしのちょっと面白い話」が字幕付きでインターネット上に公開されている。ネット上で公開されている音声・動画の日本語発話データは,現在これが世界でただ一つあるだけである。

今回,試しに2010年度のデータを,英語・中国語・フランス語に翻訳してみた。というか,人に頼んで翻訳してもらった。それらは英語版字幕・中国語版字幕・フランス語版字幕の形で、上記の2010年度のサイトで公開している。

翻訳の最終的な監修を頼んだ相手は英語訳・中国語訳・フランス語訳いずれも2人で,「日本語母語話者+当該言語母語話者」の仲良しペア(中国語訳とフランス語訳の場合は夫婦)である。フランス語訳を監修した夫婦は,翻訳の方向性をめぐって夫婦ゲンカまでして下さったという。やはりこういう微妙な機微に関わる話を本気で翻訳しようと思うと,そこまで力を入れなければ無理なのかもしれない。それでも訳しきれなかった部分はもちろんあるが,とにかくこれを機に,翻訳を監修して下さった方々のご苦労話などを伺い、さらに翻訳・語用論・文化・会話・コミュニケーション・笑い学に通じていらっしゃり,連載コラム「談話研究室にようこそ」でもお馴染みの山口治彦先生をコメンテータとしてお迎えして,ことばの技芸・スキルについても考えを深めようというのが今回の集会の趣旨である。

日時はこの10月11日(金)午後5時~午後7時,会場はTKP大阪梅田ビジネスセンター,これは「大阪駅の近くの,高速道路が貫通しているビル」と言えばすぐわかる(//tkpumeda.net/access.shtml,〒553-0003 大阪府大阪市福島区福島5-4-21 TKPゲートタワービル)。そこの13階 カンファレンスルーム13Bが会場である。参加費は無料,但しその後の懇親会は有料。プログラムは以下の通り(敬称略)。

17:00 開会
17:00-17:10 「ちょっと面白い話」データベースとは?
定延利之(神戸大学)
17:10-17:35 「ちょっと面白い話」のフランス語訳をめぐって
Ghislain Mouton・山元淑乃(琉球大学)
17:35-18:00 「ちょっと面白い話」の中国語訳をめぐって
孟桂蘭・新井潤(スリランカ・ケラニア大学)
18:00-18:25 「ちょっと面白い話」の英語訳をめぐって
Anthony Higgins・森庸子(同志社大学)
18:25-19:00 ディスカッション 山口治彦(神戸市外国語大学)
19:00 閉会

というわけで,どなたでもご参加できますので,皆様お誘い会わせの上,ふるってご参加ください。参加ご希望の方は,以下のいずれかのアドレス宛てにその旨(懇親会にも参加ご希望の方はそれも併せて),ご連絡をよろしくお願いいたします。([at]は「@」に直してご送信ください。)
sadanobu[at]kobe-u.ac.jp または yoiyamaken2013aki[at]yahoo.co.jp

筆者プロフィール

定延 利之 ( さだのぶ・としゆき)

神戸大学大学院国際文化学研究科教授。博士(文学)。
専攻は言語学・コミュニケーション論。「人物像に応じた音声文法」の研究や「日本語・英語・中国語の対照に基づく、日本語の音声言語の教育に役立つ基礎資料の作成」などを行う。
著書に『認知言語論』(大修館書店、2000)、『ささやく恋人、りきむレポーター――口の中の文化』(岩波書店、2005)、『日本語不思議図鑑』(大修館書店、2006)、『煩悩の文法――体験を語りたがる人びとの欲望が日本語の文法システムをゆさぶる話』(ちくま新書、2008)などがある。
URL://ccs.cla.kobe-u.ac.jp/Gengo/staff/sadanobu/index.htm

最新刊『煩悩の文法』(ちくま新書)

編集部から

「いつもより声高いし。なんかいちいち間とるし。おまえそんな話し方だった?」
「だって仕事とはキャラ使い分けてるもん」
キャラ。最近キーワードになりつつあります。
でもそもそもキャラって? しかも話し方でつくられるキャラって??
日本語社会にあらわれる様々な言語現象を分析し、先鋭的な研究をすすめている定延利之先生の「日本語社会 のぞきキャラくり」。毎週日曜日に掲載しております。