今回は、南東北地方(福島県、山形県、宮城県)のもてなしの方言をとりあげます。
(写真はクリックで拡大します)
福島駅構内には、「コラッセふくしま」【写真1】というショッピングセンターがあります。「こらっせ」については、第13回でさらに詳しくとりあげられています。福島市から南東に約20キロ足をのばすと「しみもち」がおいしい川俣に着きます。道の駅には、「こらんしょ川俣」【写真2】と書かれた、からりこフェスティバルのポスターが貼られています。「こらっせ」と「こらんしょ」、どちらも「いらっしゃい」の意味ですが、「こらっせ」は、同僚や友達に、「こらんしょ」は、目上に用いられ、「こらんしょ」のほうが「こらっせ」より新しい形とされています。古くは、「こっせ」という言い方があったそうです。
「ゴジャーレ」(いらっしゃい【写真3】)と大きく地域の宣伝をしているのは、山形県村山市です。「ござる」(「御座ある」の縮約形、「行く」・「来る」の尊敬語)が「ござれ」(命令形)になって「ゴジャーレ」と変化したのです。「ござる」(尊敬語)は、山形県、宮城県、福島沿岸地方と、以南の日本海側を中心に広く分布しています。
宮城県登米市には、「登米の街へ“ほっ”としに来てけらぃん」【写真4】というもてなしの言葉があります。「けらぃん」は、「くださいね・ちょうだいね」という意味です。「けらい」が元の形で、「けらぃん」は、やさしさをこめた表現です。白石市には、もてなしの言葉で「よーぐござったない」(ようこそおいでくださいましたね【写真5】)があります。「な」の変化した形「ない」がついています。「~ぃん」も「~ない」もやさしさの表現です。
紙面の都合でご紹介できなかった写真資料は、「遊びに来てけやれ!!」(福島県南会津町)、「よらんしょ! こらんしょ! 喜多方へ」(会津若松市)、「来てみらんしょ 居てみらんしょ 住んでみらんしょ」(会津若松市)、「よってがんしょ」(西会津町)、「こらんしょ横丁」(福島市)、「んめぇ! おもしぇ! ござへぇ! 庄内」(山形県庄内町)、「よぐござったなぁ。ありがどさま~。」(最上郡)、「あがらっしゃれ」(新庄市)、「庄内ってこげだんよ」(庄内)、「よぐござったなぁ。ありがどさま~。」(最上郡)です。
もてなしの方言(南東北地方) | |||
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写真1 | こらっせ | 福島市 | 福島県 |
写真2 | こらんしょ | 川俣市 | |
写真3 | ごじゃーれ | 村山市 | 山形県 |
写真4 | 来てけらぃん | 登米市 | 宮城県 |
写真5 | よーぐござったない | 白石市 |
編集部から
皆さんもどこかで見たことがあるであろう、方言の書かれた湯のみ茶碗やのれんや手ぬぐい……。方言もあまり聞かれなくなってきた(と多くの方が思っている)昨今、それらは味のあるもの、懐かしいにおいがするものとして受け取られているのではないでしょうか。
方言みやげやグッズから見えてくる、「地域語の経済と社会」とは。方言研究の第一線でご活躍中の先生方によるリレー連載です。