この連載も,今回から新たな100回となります。
この記念すべき回の題材として,私が住んでいる,岩手県宮古市の『市』を挙げての方言メッセージ,「おおきに」と「おでんせ」を取り上げます。
使用例の紹介の前に,今回の二つのことばについて説明します。「おおきに」は,「ありがとう」の意味です。「おおきに」というと関西(だけ)のことばかと思われがちですが,東北地方でもよく使うことばです。「おでんせ」は,この連載で何回か(第36回,第61回)取り上げている「いらっしゃい」の意味です。
まず,宮古市役所(前庭)の例を紹介します。「おおきにと おでんせの心が 生む交流」と,高さ5メートルほどの『塔』に,大きく書かれています【写真1】。“『市』を挙げて”と表現した意味がご理解いただけるかと思います。なお,塔の先端の絵は,宮古市のシンボル「鮭」の顔を図案化したものです。
次に,陸中海岸国立公園内の浄土ヶ浜パークホテルの,売店「おおきに」と料理茶屋「おでんせ」【写真2】です。方言ネーミングであり,方言メッセージでもあります。このホテルは,1997年10月の,天皇皇后両陛下の宮古市行幸啓の際の行在所(あんざいしょ)となりました。
また,JR宮古駅に隣接するみやげ物店では,出入り口の両面に示されています。表側,つまりお客が入るとき目に入るように「おでんせ」が,また,店内側,つまりお客が出るとき目に入るように「おおきに」のメッセージが,それぞれ示されています【写真3】。なお,このみやげ物店の店員さんは,『新明解国語辞典』をカウンターに置いて,よく使っているということでした。
このように,市役所,観光地としての代表的ホテル,そして,お客様方がまずは降り立つ駅前に,「おおきに」と「おでんせ」が使われているわけです。どうぞ,一度,宮古さおでんしてくたせんせ。おーきに,どーもどーも,ありがとごぜんす。
皆さん,この先100回も,また,その先も末永く,どうぞ,ご愛読のほど,よろしくお願いします。